メタボメタボとかまびすしい世の中で、1日の摂取カロリーの許容範囲で何を摂取するのかコントロールすることが極めて重要になっている。その時流をうまく捕らえたのがネスレの展開だ。
日経新聞7月12日(土)の朝刊に<ネスレの菓子全品 カロリー量見やすく>という記事が掲載された。<ネスレ日本は9月から「キットカット」など約20品目の菓子全品でカロリーを目立つように表示する>とのことだ。今までにもあったような、外箱への総カロリー数表示ではなく<個包装フィルムにも印字>で、さらに<含有量と1日に必要な量に占める割合を出す>というところがポイントだ。<健康志向の消費者から不安を取り除く>のが目的である。ちなみにキットカット1枚は<66キロカロリー・3%>だという。
今を昔、某ダイエット食品は「食べた~い。でも、やせた~い」というCMで世の話題をさらった。ダイエッターの偽らざる心情を表現した名コピーが共感を呼んだのだ。
昨今はダイエットを志す、もしくは必要性を自覚する者だけでなく、ある日健康診断で「あなたはメタボです」と唐突にして何とも残忍な宣言を下される世の中だ。「男性のウェスト85センチ以上はメタボという規定は厳しすぎ」という批判もあるが、宣言されてしまうのだ。
宣言されないために。もしくは宣言されてしまってからの是正のためには誰もが「食べた~い」に我慢しなくてはならないのだが、闇雲に我慢できるものではない。そこで、1日のカロリー摂取量を考慮しながら、「これを食べると何カロリー?」と考えて食べるものを取捨選択するという、いささか細かすぎるような配慮をせざるを得ないのである。
そうした時に困るのは、「これを食べると何カロリー?」がわからないことだ。
マーケティングでいう「ニーズ」とは、理想的な状態と現状の間にあるギャップであると定義できる。「どの程度のカロリー摂取になるのかがわかる」のに対し、「どれくらい(1つ当り)食べれば何キロカロリーになるかわからない」という現状がある。そこに「明確に知りたい」というニーズが生じている。そして、それに対して提供すべきもの=ウォンツが、「カロリー表示」なのだ。
ニーズが満たされないとどうなるのか。「君子危うきに近寄らず」である。チョコレート菓子などは、さぞやカロリーたっぷりな凶悪な存在だろうと思って購入が手控えられる。これは「でも食べた~い」はずの消費者にとっても、売りたいメーカーにとっても不幸なことだ。その解決策となるのがカロリー表示なのだ。明示して判断できるようにすること。つまり「見える化」である。ニーズに適確に応えることは、売れ続けるための絶対条件であることは言うまでもない。その意味からすると、ネスレは一歩先を行った展開を実行したことになる。
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2008.08.05
2008.09.25
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。