取締役の平均年齢が若い企業ほど、収益力が高いというデータがあるらしい。とすれば、年齢と収益力には何らかの相関関係があるとも考えられる。仮に関係があるとしたら、どんなものだろうか。
40代社長の時代
つい最近、そこそこ名の知れた企業で話題となる社長交代劇があった。いずれも共通するのは、新社長が40歳代であること。その一つ、HISで4月1日に社長に就任した平林氏はちょうど40歳である。若い社長が就任しているのは何もHISのような比較的新しい企業だけではない。ホテル界の老舗・ホテルオークラの荻田・新社長も43歳である。
ベンチャー系の社長に若い人が多いのは当たり前だが、オークラのようないわゆるエスタブリッシュ系とされる企業でも、40代社長が普通に登場しつつあるようだ。以前なら、40代の社長はそれだけでニュースバリューがあった。たとえばローソンに40代前半だった新浪氏が就任した時などは大ニュースとなったが、今ではそれほどのビッグニュースでもない。つまり40代での社長は当たり前のこととなってきているわけで、これは日本企業にとっては結構大きなパラダイムシフトだと思う。
ここにおもしろいデータがある。日経産業新聞が調べた東証一部上場企業を対象とした、取締役の平均年齢と総資産経常利益率(ROA)の関係である。それによれば
「取締役が若い企業ほど、ROAも高くなる傾向がみられた。平均年齢が55歳以下の企業のROAは8.4%で、年齢が上がるにつれてROAは下がっていった」とある(日経産業新聞6月23日付26面)。このデータをもって記事に付けられた見出しは『若手役員、企業に活力』となっている。
役員が若いと高収益になるのか
こう問いを立ててみると、実は記事に暗示されているような(していないのかもしれないけれど)相関関係には盲点があることも見えてくる。つまり役員が若いから高収益である可能性は確かにあるが、逆に高収益企業だから若い役員を抜擢できているとも考えられる。相関関係と因果関係をごっちゃにしないよう注意したいところだ。
とはいえいずれにしても、若くても役員になれる状況が固まりつつあることだけは間違いないようだ。この点は、今や死語となった「年功序列社会」だった日本が、完全な転換期を迎えたということなのだろう。では、なぜ若くして役員になる道が開かれたのか。
若くても、20年前の40代とは情報経験量が違う
役員になる道が開けた理由を端的に言えば「周囲にある情報量と、情報吸収量が培う意識の差」ではないだろうか。マネジメント、マーケティング、ファイナンスなどに関する情報量が今は、おそらくは20年ぐらい前とは比べものにならないほど大量に流通している。もちろんネットがある。しかも、そもそもビジネス関係の書籍、雑誌が、感覚的にはこの10年ぐらいで急増しているのではないか。
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