世の中を一律に見ずに、きちんとセグメンテーション(区分)して、ターゲットを選定する。そして、ターゲットには、その商品を本当に必要とするニーズがあるのかを見極める。ビジネスの世界では極めて基本中の基本だ。・・・だが、残念なことにその基本が忘れられるのがこの国の悪いところのようだ。
昨今、これだけ「テレビ離れ」が進んでいると言われる世の中で、テレビがないと本当に<日常生活に支障を来す>のだろうか。テレビ以外に受け取ることができない<日常生活に支障を来す>ほどの情報とはなんだろうか。
ニュースを中心とした時事情報であろうか。では、新聞はどうなのだろう。
大学の学生や企業研修で接点のある若手ビジネスマンに聞くと、驚くほど新聞を読んでいない。それぐらい「新聞離れ」が進んでいるのだ。
では、彼らが<日常生活に支障を来す>状況になっているかというと、全くなっていない。「PCでニュースを見ているから」だという。さらに聞けば、テレビのニュースも見ていないし、そもそものテレビ視聴時間も減っているようだ。
今日、テレビはないと<日常生活に支障を来す>ほどの存在なのだろうか。
まずは約50億円、続いて843億5000万円、場合によっては1500億円近く投下して、テレビ視聴環境を国民の基本的な生活インフラとして整備する意義とはなんだろうか。
テレビ、場合によっては新聞ですらニュースを見ない層が「PCで見ている」のであれば、いっそ、PCを配布することだって視野に入れればいいだろう。ASUSやhp、DELLが鎬を競おうとしている低価格ノートPCはOSにWindowsを使わなければ199ドルパソコンになる。現に米国市場でのASUSのEeePCはリナックスモデルで199ドルだ。
現行の地デジチューナーをメーカーに2万円から5千円にさせるのであれば、PCメーカーに50ドルパソコンへのチャレンジを促してもいいのではないだろうか。
誤解なきようにいただきたいが、筆者は「地デジチューナーの代わりにPCを配布せよ」と主張しているのではない。PCは一例だ。「対象世帯の全てがテレビを必要としているのではないだろう」と言いたいのだ。
冒頭記したように、世の中を一律に見てセグメンテーション(区分)をせず、必要とする者の特定(ターゲティング)もせず、ターゲットがその商品を必要とするニーズがあるのかも見極めずにバラマキをしようとしている。そのことに反対しているのである。
国民のうち情報収集に対して<日常生活に支障を来す>者を救済しようとするなら、必要とされている情報収集手段は何なのかを考えるべきだ。
また、情報収集以前に<日常生活に支障を来す>事項も人によってあるだろう。約50億円、続いて843億5000万円、場合によっては1500億円という予算を一律な使い途に投入すべきではない。
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2008.07.08
2008.07.13
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。