小売店舗のバイヤーは、生活者の買い物を代行しています。当然、彼らは今後、何が売れるかを必死で考えて仕入れているとは思うのですが、未来なんてわかりませんよね。そんな彼らはノイズなのかもしれません・・・。
実際、バイヤーへのアンケート調査でも、投下する広告宣伝費は、非常に重要な購買決定要因になる、との結果が出ています。
生活者の側も、実際に提案されてみないと、それが本当に欲しいかはわかりません。また、本当に買うか?もわからないんですね。
こういった状況の中で、モノを作る側のメーカーサイドとしては、売ろうとする考え方は大きく2つに分かれます。
1つは、何が売れるかなんてわからないんだから、
何でもとにかくバイヤーに売ればいいんだ!
という考え方です。バイヤーとのリレーションをベースにモノを考える。広告の出稿も、生活者が見るわけもない業界紙にリソースをより多く配分したりする。
とにかく営業マンが店舗に通って、バイヤーとの関係を強化する。アメとムチで関係を作り上げる。アメはひたすら接待ですね・・・。週末は必ずゴルフ、みたいな営業マンも業種によっては相当います。
ムチは実際に損害を与えるようなことをスレスレでやる・・・。
例えば、大手の企業であれば、たまにそれなりのヒット商品が出ます。そういう商品はどのバイヤーも買いたい。でも、普段から付き合いがないと、買えない。
あるクリーンなイメージのゲームメーカー(どことは言いません)はクリスマス商戦の時に、そういうことを如実にやっていました。価格交渉力の強い、言うことを聞かないバイヤーには、クリスマス前の発注を貰ったときに、「ちょっと商品が遅れまして、遅れまして」と言ってクリスマス商戦終了ぐらいの時に、大量に商品を入れる。クリスマスを過ぎると全く売れない。これをやられると、バイヤー側としてはたまったものではないです。極端な例ですけどね。
でも、こういうことは有り得るお話しです。だから、こういうことを防ぐためにもバイヤーもメーカーとの付き合いにリソースを注ぐ。メーカーもバイヤーとの付き合いにリソースを注ぐ。その付き合いこそが、バイヤーの購買を生み出す。ここに生活者不在のマーケティング活動が出来上がりますね。この状況だと、バイヤーはノイズというよりは、メーカー、バイヤーがともに生活者軽視しているというだけのお話しですけどね。
もう1つは、何が売れるかはわからないけれど、わからない中でも、生活者が買いたい商品をまっとうに考えて商品を作って、生活者とコミュニケーションを取って売っていくという考え方ですね。
バイヤーも生活者をしっかりと見ているから、メーカー側の意図をわかってもらえれば売れるだろう、という考え方ですね。この考え方の中で、バイヤーが仕入れを失敗すれば、確かにバイヤーはノイズと言えます。
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2015.07.10
2015.07.24
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。