小売店舗のバイヤーは、生活者の買い物を代行しています。当然、彼らは今後、何が売れるかを必死で考えて仕入れているとは思うのですが、未来なんてわかりませんよね。そんな彼らはノイズなのかもしれません・・・。
「空想生活」というサイトを知っていますか?
生活者が欲しい!と思う商品が、実際に商品化されてしまうサイトです。
その仕組みとしては、まず空想生活のWebサイト上で「生活者の欲しい」に対する提案が行われます。その提案に対して「ぜひその商品を買いたい」という人がリクープラインを超えるぐらいに現れると、その提案は実際に商品化されます。そして、買いたい!と言った人は実際にその商品を買う、という仕組みになっています。
「無印良品」ブランドで有名な株式会社良品計画では、このシステムを採用し、自社商品開発の一部をアウトソースしていますし、東京電力と共同で「Switch!the Design Project」という「でんきのちからで生活をデザインする」というコンセプトのプロジェクトを進めています。
「エレファントデザイン」という企業が企画、運営しているんですが、その企業の問題提起はけっこう衝撃的なものです。
「最終消費財の世界では、メーカーの商品の発注権限はバイヤーが握っている。しかし、店舗では日々チャンスロス、廃棄ロスが起こっている。そのノイズというものは、非常に大きな無駄を生み出している。これは生活者本位のマーケティング活動ではないのではないか?本来は、生活者が望んだものが商品化されるべきではないか?」とのことですね。
確かに、バイヤーは今、何が売れているか?はわかりますが、今後何が売れるのか?はわかりません。
具体的な数字で言えば、全国民の総消費135兆円は、200万人のバイヤーによって代行されていて、1人のバイヤーは約6万回の買い物、約7000万円分の注文を代行しています。
量販店であろうと、アパレル店舗であろうと、コンビニであろうと、バイヤーが商品の仕様を決めていると言えます。そうすると、バイヤーの読み違いは無視できません。
以前、コープで30年、購買一筋の方にインタビューしたことがあります。メーカーの営業マンが「消費者ニーズ」と言ったりすると、失笑せざるを得ないとのことでした。何が売れるかは、研究を続けてきたが本当にわからない。それを消費者に遠いメーカーの若造が過去のデータだけを見て言うな、と思ってしまうそうです。
メーカー側も、そういう事情は非常によくわかっています。
例えば、食品メーカーでは、新商品を売り出す際に、営業マンに広告宣伝の投下量、いわゆるGRPの資料を持たせます。これだけ宣伝を打ちます!商品が棚に並ぶ初めの週には、ここまで広告を投下します!だから買ってください、と。
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2015.07.10
2015.07.24
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。