効率的にものごとを記録する。記憶する。そして、その成果として学習や仕事というアウトプットをする。「良質なアウトプット」のためには、実は大きなポイントがある。今まで何度か触れてきたことではあるが、様々な記事・コラムの引用と、新ネタを加え全体を整理してみたい。
■新入社員にブログを書かせる
通信教育の「Z会」では、「新入社員にブログを書かせる」という教育をしているという。当INSIGHT NOWのビジョナリーでもある寺西氏の記事を参照されたい。
http://www.insightnow.jp/article/1279
新入社員にはとかく教えなければならないことが多い。さらに、学生気分から、社会人・組織人へとの意識転換と気付きを与えなければならない。言うは易く行うは難い、伝統的なテーマだといえるだろう。
詰め込んだり、プレッシャーをかけても効果はない。新入社員の情報処理能力はそんなにまだ高くはないし、意識など簡単に変わるはずもないのだ。そこで、大切なのは「自ら気付かせること」である。そして、そこでも効果的なのが「アウトプットさせること」なのだ。ブログを書かせることによって、当然、ネタを自ら探す。そして、整理して記事にする。その課程で、重要なことがきっちりとアタマの中にインプットされることになるのだ。
この取り組みは同社だけでなく、採用している企業も多くなっているようだ。今年、数社から同じような取り組みとその成果を聞くことができた。是非多くの企業で取り入れてもらいたい内容だ。
■「傾聴」のためのアウトプット施策
上記のような取り組みは、さらに幅広い応用が可能だ。筆者の社会人としてのキャリアはコンタクトセンターから始まったが、その業界のカンファレンスで最近面白い話を聞いた。
コンタクトセンターの重要な任務の一つは、いかに「顧客の声(Voice Of Customer)」を収集するかである。そのために、センターで顧客と電話応対を行うコミュニケーターは、「顧客の声に耳を傾けろ」「傾聴せよ」と教育される。しかし、これがまた、なかなか言うは易く行うは難いのだ。ついつい、大切な話をスルーしてしまったり、自ら思い込みで判断してしまったりと、なかなか顧客の思いまでを汲み取るまでは難しいのである。
そこで、メーカーのお客様相談室では「提案制度」を採用した。「提案制度」事態は珍しいものではないかもしれないが、その徹底度がすばらしい。
週に1つ以上は、末端のコミュニケーターも、その管理をするスパーバイザーも、センターマネージャーも、顧客の声を元にした提案を提出することが義務化されている。新製品でも、製品改良でも、応対業務に関する改善でもかまわないが、何らか、論拠となる顧客の声を示し、そこから自説を加えて提案を作るというのだ。
これによって、コミュニケーターは、より丁寧に顧客の声を汲み取るようなオペレーションを実施する。また、スーパーバイザーは、応対内容を聞き漏らさないよう、応対のモニタリング業務に注力する。マネージャーも部下からの話から、きちんと重要な顧客の声を吸い上げようとする。
つまり、「週1回の提案」というアウトプットの義務化によって、センターの誰もが、一層、顧客の声の耳を傾けるという、「インプットの良質化」を図ることに繋がったということなのだ。
インプット←→アウトプット。このバランスは、ついつい、より良いアウトプットを仕様とするが故に、ただひたすらインプットに注力しがちで、結果的にそれは効果的ではなく、プアなアウトプットになってしまいがちだ。今回整理した、「アウトプットを前提として、インプットすること」には、様々な方法があろうかと思う。しかし、その根本にある考え方を理解し、実践することをお勧めしたい。
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2008.05.21
2008.05.27
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。