「え!1秒で読めるの?」という素直な反応は、知性と教養が邪魔をしてできませんでしたが、上手なタイトルだなあ、と思い買ってみました。著者によると、ビジネスマンが経営的に財務諸表を読めるようになるために書いたそうです。
・・・といったところでしょうか。けっこう補足したサマリーになってしまっていますが・・・。これで興味をお持ちの方は買ってみてください。
この本で主張している、「ビジネスマンは財務諸表が経営的に読めればいい、簿記から考える必要はない」、には賛成ですが、説明が会計概念からいろいろなことを説明するので、やっぱりちょっとした違和感はありますね。
マーケティング的な視点に慣れている人は、その違和感を楽しみながら読むといいかもしれません。
ただ、これはちょっとおかしいだろう、ということもいくつかありますね。
特にIT企業に関する考え方と、PPMに対する考え方が明らかにおかしいですね。
IT業界は参入障壁が低く、比較的簡単に損益分岐まで到達する、といったことが書かれています。成長市場にあった時のお話しと、ビジネスモデル的なお話しがごっちゃになっています。それと、マーケティングROI的なお話しで見たら、IT企業は決していいとこ取りではないことがわかりますが、あまりそういうことに触れていません・・・。
そして、PPMのお話しの中で、「カネのなる木」になるまで利益は出ません、といったことが書かれています。これも順番が相当逆なお話しですね。
成長市場でジェネレートされるキャッシュフローの量がどれぐらいか?という観点と、市場が成熟した場合に、シェアを多く持っていた場合に、利益率を高める条件という観点なしに、いろいろと論じてらっしゃいます。
別にマーケティング的なことを期待して読む人もいないだろう、というお話しではありまけど。ファイナンス的な知見と、マーケティング的な知見を統合している人の著作ではないですね。そのあたりは期待できません。
結果からモノを見ると、こうなってしまうという例のような感じでしょうか・・・。
題名のインパクトは大きいので、マーケティング的に、そこは成功ですけどね。
いわゆる会計系コンサルティングの香りが強くする著作ではないかな、と思いました。
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2015.07.17
2009.10.31
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。