5️⃣AI時代を読み解くキーワード⑤ Digital Twin──現実をデジタルに再現し、「起きる前に試す」時代へ
例えば、機械のわずかな振動変化から故障の兆候を捉えれば、完全に停止する前に部品を交換できます。
壊れてから直す「事後保全」、一定期間ごとに交換する「予防保全」から、壊れそうな状態を予測して対応する「予知保全」へ。Digital Twinは、設備保全の考え方を変えます。
現実で失敗する前に、デジタル上で失敗する
Digital Twinは、完成した設備の管理だけでなく、製品や工場をつくる前の設計にも使えます。
クルマなら、車体の強度、空気抵抗、衝突時の変形、バッテリー性能、ソフトウェア制御などを、実物を何台も試作する前に検証できます。
工場なら、新しい設備を置いたときの作業員の動線、搬送ロボットとの干渉、商品の流れ、電力使用量、安全性などを事前に確認できます。
その結果、試作品の削減、開発期間の短縮、安全性の向上、設計変更の早期発見、市場投入の迅速化が期待できます。
Digital Twinの大きな価値は、現実世界で失敗する前に、デジタル空間で何度も失敗できることです。
Physical AIとSDVの訓練場になる
第4回で取り上げたPhysical AIは、ロボットやクルマなどの身体を持ち、現実世界で行動するAIです。
しかし、現実の工場でロボットを学習させれば、人や設備にぶつかり、生産を止める危険があります。そこで、工場や倉庫をDigital Twinとして再現し、さまざまな条件の中で繰り返し訓練します。
Digital Twinは、Physical AIの学校であり、訓練場なのです。
SDVにも同じことが言えます。悪天候、歩行者の飛び出し、急停止、センサー故障などを、すべて現実の道路で試すことはできません。クルマがソフトウェアによって進化するほど、安全に検証するDigital Twinが重要になります。
都市、防災、医療にも広がる
Digital Twinの対象は工場だけではありません。道路、鉄道、建物、電力、水道、人の移動などを再現すれば、都市計画や防災にも活用できます。
● 新しい道路をつくると交通量はどう変わるか
● 大雨でどこが浸水するか
● 災害時に避難所へ人が集中しないか
● 救急車や消防車は移動できるか
● 電力や通信が途絶えたら何が起きるか
災害が起きてから考えるのではなく、起きる前に複数の失敗を経験しておくことができます。
将来的には、心臓、血流、薬への反応、生活データなどを組み合わせた「人間のDigital Twin」も考えられます。ただし、健康データは極めて重要な個人情報であり、AIの予測も確定的な診断ではありません。技術的に可能だからといって、無条件に使ってよいわけではありません。
AI時代を読み解くキーワード
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
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