2026.09.14
4️⃣AI時代を読み解くキーワード④ Physical AI──AIは「画面の中の頭脳」から「現実世界で働く身体」へ
富士 翔大郎
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
4️⃣AI時代を読み解くキーワード④ Physical AI──AIは「画面の中の頭脳」から「現実世界で働く身体」へ
従来のロボットと何が違うのか
工場では以前から多くのロボットが働いています。
自動車工場では、
* 溶接する
* 塗装する
* 部品を運ぶ
* ネジを締める
* 製品を検査する
といった作業を産業用ロボットが担当してきました。
しかし、従来の産業用ロボットは、決められた場所で、決められた動作を、正確に繰り返すことを得意としていました。
例えば、
「この位置に部品が来たら、決められた角度でつかみ、隣へ移す」
という仕事です。
部品の位置が少しずれたり、予想していない物が置かれたりすると、動作を止めることがあります。
決められた環境では非常に強いのですが、変化の多い環境への対応は苦手でした。
Physical AIでは、ロボットがカメラやセンサーで状況を理解し、その場で判断します。
部品の位置が変わっていれば、つかみ方を変える。
進行方向に人がいれば、止まるか避ける。
予定していた経路が塞がれていれば、別の経路を探す。
物を落としたら、状況を確認してやり直す。
Google DeepMindが2025年に発表したGemini Roboticsでは、物の位置が変わったり、つかんでいる物が滑ったりしても、状況に応じて計画を立て直し、作業を継続する能力が示されました。(Google DeepMind)
つまり、従来のロボットが、
決められた動作を繰り返す機械
だとすれば、Physical AIは、
状況を理解し、行動を変えられる機械
です。
Physical AIの基本は「見る・考える・動く」
Physical AIの働きは、大きく三つに整理できます。
一つ目は、見ることです。
カメラ、マイク、距離センサー、温度センサー、圧力センサーなどから、周囲の情報を受け取ります。
二つ目は、考えることです。
受け取った情報をもとに、
* 何があるのか
* 人はどこにいるのか
* 何を求められているのか
* どのような危険があるのか
* 次に何をすべきか
を判断します。
三つ目は、動くことです。
判断した結果を、
* ロボットアーム
* 車輪
* 脚
* ドローン
* 自動車
* 工作機械
などへ伝え、現実世界で行動します。
Google DeepMindは、ロボットが現実世界で働くためには、一般性、対話性、器用さという能力が重要だと説明しています。異なる環境や物に対応し、人間の指示や状況の変化に応じ、細かな物理操作を行う必要があるからです。(Google DeepMind)
AIに「身体」が必要になる
生成AIは、大量の文章や画像から学び、言葉や映像の関係を理解してきました。
しかし、現実の世界には、文章だけでは理解できないことがたくさんあります。
例えば、
* コップを強く握ると割れる
* 柔らかい物は形が変わる
* 床が濡れていると滑る
* 重い物は持ち上げにくい
* 人の近くではゆっくり動く必要がある
* 同じ形の物でも持ち方によって安定性が変わる
といったことです。
人間は、子どものころから物に触れ、転び、失敗しながら、物理世界の性質を学びます。
Physical AIにも、同じように現実世界の法則を理解する能力が必要になります。
そのため、Physical AIは、単にロボットへ生成AIを載せれば完成するものではありません。
* 空間を理解する力
* 物体の位置や形を認識する力
* 動いた結果を予測する力
* 力加減を調整する力
* 失敗したときに修正する力
* 人間の安全を優先する力
が必要です。
Google DeepMindのロボット向けモデルでは、視覚と言語だけでなく、行動までを一体的に扱うVLA、つまりVision-Language-Actionという考え方が使われています。ロボットは、見たものと言葉による指示を結び付け、実際の動作へ変換します。(Google DeepMind)
AI時代を読み解くキーワード
人材育成コンサルタント、シニアインストラクター
● 人材育成、DX・IT、コンサル、マーケの経験を踏まえて、人材教育の新たなアプローチを探求中 明大法なのに齋藤孝ゼミ🤣 教免3種ホルダー イノベーション融合学会専務理事 教育研究家、モノカキの時は、「富士 翔大郎」と言います。天才トム・ショルツの「BOSTON」と「マニュアル車」「海外ドラマ」をこよなく愛する静岡県民
フォローして富士 翔大郎の新着記事を受け取る