「そろそろ反撃してもいいですか?」という挑発的なコピーで1年前に始まったDoCoMo 2.0。しかし、MNP(Mobile Number Portability=携帯電話キャリア乗り換え)では一人負けの様相を呈し、「そろそろ反撃しなくてよろしいんですか?」と思っていたら、ついに4月8日、日経新聞朝刊で<ドコモ、シェア50%割れ>と報じられた。PHSを含めた携帯電話・PHSの2007年度のシェアは、同社は49.7%となった。
この49.7%という数字、ランチェスター戦略の研究者、B.O.クープマンが提唱した、クープマンの目標値から考えれば、二位以下が逆転することはかなり困難なシェアのレベルである41.7%(相対的安定シェア)をクリアしている。しかし、KDDIがもはや29.5%、ソフトバンクモバイルが18.1%と猛追している。クープマンによれば26.1%で「市場影響シェア」と呼ばれるトップに強い影響力を与えるポジションを。19.3%で「並列的シェア」と呼ばれる第二位をうまく出し抜き、トップを狙えるポジションをとれるとしている。携帯電話市場が正に乱戦状態であることが、この数字からもわかるのだ。
しかし、前述のクープマンの目標値はあくまでも目安に過ぎない。企業は各々、絶対に守るべきシェアの数字というものを持っているはずだ。例えばトヨタ自動車は国内販売シェア40%を絶対死守する。その数字を下回りそうなときには、あらゆる手段を使って販売強化をするのだ。ドコモは今回の数字をどう見ているのだろうか。
一年を経てもDoCoMo 2.0は継続している。若手タレント8名を豪華に起用したCFも継続しているし、Webサイトではそのタレントが演じる男女8名のキャラクタームービーが紹介されていたりする。シェア低下はどこ吹く風で独自の世界観を貫くようにも見える。
そんな中、おやっ?と思う、小さな工夫を家電量販店の店頭で目にした。ほんの小さなことなのだけれど。
この春も多数の新機種が発売された。やはり、携帯キャリアとしては魅力のある端末を持っているかどうかは重要だ。しかし、販売価格と売り方の見直しによって、端末は全体的に随分と高くなっている。よほどきちんとその魅力を訴求しなければ、買い換えの促進などできない。
そこで考えたと思われるのが、小冊子だ。展示されている携帯端末の実機やモックの棚に機種毎に小冊子が添えられていたのだ。同社の総合カタログは総ページ数、何と84ページ。端末の情報だけでなく、料金プランや各種サービス内容まで包括しているのでどうしても厚くなる。端末個別のパンフレットもいくつか用意されているが、ラックから探し出すのは面倒だ。気になる端末をさわってみながら、小冊子を手に取り、「おっ、こんな機能もあるのか」と気づく。持ち帰っても、コンパクトな冊子なので、気楽にパラパラと何度か見る気になる。
そんな小冊子だけでシェア回復が望めるとは思わないのだが、派手な反撃ではなく、小さなことからコツコツとやっていくのは大切なことだと思う。
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2008.04.09
2008.05.20
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。