ビジネスで成功するためには、複数の選択肢を考え、もっとも成功確率の高い選択肢を選び実行することが必要不可欠だ。
部下が正確な情報をつかんできたとする。
どうやら顧客は、製品本体だけの価格だけではなく、購入してから3年間の償却を計算しており、3年間のトータルコストがX製品の方が10%安いというのだ。
そして、製品自体は、ほぼ同等の価格だが、保守価格が30%も安い。
次に、製品を下げるか、保守を下げるか自社としてトータル利益が大きい方が優先される。
そこで、あなたは保守サービス費用の価格を35%下げることにする。
そのためには、第一に、保守費用を35%下げたら顧客がA製品を選択してくという約束を取り付けておかねばならない。
そのためには、まずはA製品のメーカーに事情を伝え、35%ダウンの見込みを確認する。
手ごたえを感じたら、顧客と約束を取り付ける。
その時点で、顧客に対いては「保守サービス費用の35%を下げるのは当社として、過去に事例のない話です。」という難易度を提示しておく。
先方は、「35%も本当に下げられるのですか?」とくる。
こうなればこっちのペースだ。
「はい。非常に難しいと思いますが、私が上司を説得します!」
と回答する。当然顧客は熱意を買ってくれる。
次は上司の部長に対して保守サービス費用を35%下げる交渉をしなければならないが、上司のツボは「当社の利益が下がらなければ価格を下げてもよい」と言うだろう。
したがって、そのためには「売値も仕入れ値も同時に下げること」もしくは「今回は下げたが、それによって、今後にわたった顧客が当社から買ってくれそうであり、それを考えれば会社にとってトータル利益は向上する」という点を抑えておかねばならない。
その準備だけしておけば、上司との交渉は楽勝だ。上司は首を縦に振らざるを得ない。
そして、最後は、実際に保守サービスを管理している自社の他部門との交渉だ。
仮に価格を下げれば管理部門から「また営業は、簡単に値下げをして」とやっかまられる可能性がある。そんな誤解を受けては社内稟議を通すときだけでなく、今後の仕事にも支障がでる。
そこで、その管理部門のキーパーソンに対しては、あらかじめ事情を対面口頭で報告しておく。いわゆる「根回し」だ。これで、完璧な体制が整った。
このように、たとえば商社の営業の場合でいえば、取引先(得意先、仕入先)、部下、上司、他部門、そしてこれらを実行するよう自分自身と交渉し成立させることで、ほとんどすべての仕事が成功に向かうのだ。
大辞林によると、交渉とは。
(1)ある事を実現するために、当事者と話し合うこと。かけあうこと。
「―が決裂する」「労使が―する」
(2)人と人との結びつき。かかわりあい。関係。
「―をもつ」「―を絶つ」
とある。そう、交渉とはまさにビジネスのコミュニケーションにおけるコアツールなのだ。
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2009.01.13
2009.01.15
株式会社メンター・クラフト 代表取締役社長
http://www.mentor-craft.co.jp/ http://www.mba-noryoku.com/ 大学卒業後、大手エレクトロニクス商社に勤務。その後、IT業界、映像コンテンツ業界と15年間の営業・企画・マネージャー等の経験を経て、 2007年4月に(株)メンター・クラフト設立。 豪州ボンド大学大学院 MBA(経営学修士) エグゼクティブ・コーチ(JIPCC認定) 日本コーチ協会正会員