今年(2019年)10月からの消費増税とともに始まった「キャッシュレス・ポイント還元制度(キャッシュレス・消費者還元事業)」を受け、現金を使わないキャッシュレス決済の利用率が大きく伸びているようだ。 なかでも、スマートフォンを使うQRコード決済「PayPay(ペイペイ)」が、決済回数と登録ユーザー数を一気に伸ばしており、他社のQRコード決済や電子マネー系のサービスに攻勢をかけている。 キャッシュレス化を推進する政府の還元事業は、キャッシュレスサービスを手がける事業者にとっても追い風となるが、その一方で、ユーザー獲得を狙う大胆な還元キャンペーン競争も激化。各社のサービスが乱立するキャッシュレス決済市場は、ますます混沌(こんとん)とした様相を呈してきている。
キャッシュレス決済の比率を大きく伸ばしたコンビニ
そして、今後の市場動向を占うのが、消費増税後にキャッシュレス決済比率を大きく伸ばしたコンビニエンスストアだ。
以下、大手コンビニ各社における増税前後のキャッシュレス決済比率の速報値を見ると……
■セブンイレブン……今年8月時点でのキャッシュレス決済比率は金額ベースで35%、10月は7ポイント上昇して42%に拡大。
■ファミリーマート……今年9月までのキャッシュレス決済比率は件数ベースで20%、10月は5ポイント上昇して25%に拡大。前年同月比ではキャッシュレス決済比率は60%増。
■ローソン……今年9月までのキャッシュレス決済比率は件数ベースで20%、10月は6ポイント上昇して26%に拡大。前年同月比ではキャッシュレス決済比率は70%増。
このように、いずれも大きく上昇していることがわかる。
これについて各社は、政府の還元制度による2%のポイント還元のほか、QRコード決済事業者が展開する高率還元キャンペーンの影響があったと分析している。これまで少額決済で現金利用が多かったコンビニだが、100円単位のチョイ買いでも利用しやすく、かつ還元率の高いQRコード決済に消費者が流れていることは確かなようだ。
収益性の低いQRコード決済事業、各社とも黒字化への道は遠い
前出した富士キメラ総研の同調査では、2025年の国内キャッシュレス決済市場は約165兆円規模(2018年/約82億円)に達し、そのうちQRコード決済は、約7兆4000億円(2018年度/約2000億円)にまで拡大すると予測されている。
とはいえ、現状のQRコード決済は、まだまだ大型の還元キャンペーン頼みの面が強く、低率な決済手数料で収益を上げる事業モデルも確立していない。QRコード決済のサービスを手がける各社は、ユーザーを取り込む先行投資型のキャンペーンを目まぐるしく展開し、赤字覚悟のポイント還元に費用をつぎ込んで消耗戦を続けている。
その先には、QRコード決済を窓口にして、他の自社サービスの利用者を増やす戦略があるとみられるが、各社とも決済事業単体での黒字化は見えていないようだ。PayPayに出資するZホールディングスの川辺社長も、「決済回数の増加で赤字は縮小しているものの、大きく収益を出すには数年かかる」と記者会見で語り、早期黒字化は厳しいとの見方を示している。
先の見えない消耗戦の中で、事業者の淘汰が進む可能性も
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