年末年始やお盆休み期間になると、ホテルや飛行機、旅行などの価格は、平常価格よりぐんと高くなり、一方の閑散期は平常価格よりお得な設定になる。 このように、供給量や期日が決まっているサービス業などでは、商品の中味は同じであっても、需要と供給バランスに応じて価格を変動させることがある。 この仕組みをダイナミックプライシングというが、昨今ではダイナミックプライシングのあり方が大きく変わり、サービス業に限らず、日用品などの一般消費財を取り扱う量販店などでも普及しはじめていることをご存じだろうか。 最新のダイナミックプライシングのカギは、AIを駆使した電子タグの導入ということだが、いったいサービス業の現場でいま何が起こっているのか。私たち消費者にどのような影響がおよぶのかを探ってみた。
ネット通販への対抗で、導入は不可避
量販店業界で大きな話題となっているダイナミックプライシングだが、すべての商品棚に電子タグを貼り付け、本部から一括でコントロールするシステムを完備するには、相当な額の投資が必要になる。しかしそれでも、需給に応じて臨機応変に価格変動を行えるシステムの導入は時代のニーズでもあり、そうしなければ生き残れない可能性も出てくることになる。
新たなダイナミックプライシングをこぞって導入する理由は、Amazonなどに代表されるネット通販への対抗だ。リアル店舗を持たないネット通販では、商品価格や在庫数量、直近の売れ行きなどのデータをシステムで一括管理し、瞬時に価格が変更する商法によって顧客のハートをつかみ、リピートにつなげている。
その利点から、米国Amazonでは1日に250万回も価格変更が行われているという。これは恐るべき即応性と回数だ。つまり、こうしたネット通販の機敏な動きに対し、リアル店舗も黙って手をこまねいてはいられなくなったのだ。
事実、家電量販店に足を運んでいながら、商品棚の前でスマホを広げてAmazonの価格と比較し、安いほうを選んで購入する客があとを絶たないという。このことから一部では「リアル店舗は商品ケースと化している」といわれもするが、しかしながら、量販店の店頭に並んだ製品がAmazonと同価格であれば、配送時間がかかるネットよりも、すぐに持ち帰れるアドバンテージをリアル店舗はとることはできる。
生殺与奪をかけ、リアル店舗とネット通販の対抗戦は熾烈をきわめているが、実際のところ店頭にいる従業員一人ひとりに、ビッグデータを駆使した情報量と機動力を課すのは無理があるというもの。そうした意味でも、本部一括管理によるダイナミックプライシングシステムの導入は、大手の量販店には不可避なものとなっているのだ。
こうした動きは、家電量販店に限った話ではなく、日用品などを扱う量販店でも導入しようとする動きがすでに出ており、ドラッグストアのチェーン店などでも実証実験が始まっている。
消費者にとって、必ずしもメリットばかりとは限らない
様変わりを見せるダイナミックプライシングだが、私たち一般消費者にはどのような影響があるのだろうか。
量販店が1円でも安く価格設定をして、競合他社やネット通販としのぎを削るとなれば、おのずと商品価格は下がり、私たちは商品を安く手に入れられる。これは、とてもけっこうなことだ。
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