出版不況という言葉すら古くさく感じられるほど、出版業界の低迷は長く続いている。若者の活字離れが主な原因などというが、その若者たちは一日の多くの時間を費やしてスマホの活字を追いかけている。 だから決して活字離れが進んでいるわけではなく、単に紙媒体から離れてしまっていることが出版不況の最大の要因のようだ。 そんな不況下の出版業界だが、近年、図書館や書店など、本を扱う場所が従来とは少し違ったスタイルに変化してきている。さらに「泊まれる本屋」として、いわゆるブックホテルが全国に広まりつつあり、活字中毒者に人気となっているようだ。近ごろ流行りのブックホテルの魅力を探ってみよう。
本は販売しているわけではないが、どれでもベッドスペースに持ち込むことができ、好きな本を読みながら“最高の寝落ち体験”ができると評判だ。利用者は観光客だけでなく、3分の1ほどは近場からの客だという。つまり、近くに住んでいても、本に囲まれる非日常的な体験ができる場所として人気なのだ。
このBOOK AND BED TOKYOは池袋本店に続き、新宿、浅草、京都、心斎橋、福岡と続々とオープンし、今では全国6店舗で展開。デイユースもできるので、活字中毒者にとってはオアシスのような空間といえるだろう。
徐々に地方にも広がっている新形態ブックホテル
このブックホテルは、東京だけでなく地方にも続々と誕生している。名古屋市中区にオープンした「ランプライトブックスホテル名古屋」は、ビジネスマンの出張や観光客の利用を想定したブックホテルだ。
シングルやツインなどの客室が用意されている、いわゆる一般的なビジネスホテルなのだが、大きな特徴はホテルの1階に24時間営業のブックカフェがあること。24時間灯りの消えない街の書店がコンセプトで、「旅」と「ミステリー」のジャンルを中心に約3000冊を販売している。宿泊客は、購入しなくても部屋に1冊持ち込めるという。
部屋には調光可能な間接照明とリーディングランプ、オットマンを備えたひじ掛け付きソファなどが置かれ、本が快適に読めることを第一に考えて作られている。朝まで本に没頭してしまう人にとって翌日の仕事への影響も気になるところだが、従来のビジネスホテルならビデオ放映のサービスをしていたはず。本好きなら、こんなブックホテルを選んだほうが充実した時間を過ごせるかもしれない。
リゾートタイプのブックホテルも増えている
ブックホテルは、観光地にあるリゾートホテル・旅館にも広がっている。これまでならゆっくり温泉に浸かり、食べきれないほどの夕食をとり、あとはすることもなくのんびり……というのが、観光地の宿での基本スタイルだったかもしれない。それが少し様変わりしつつあるようだ。
【箱根本箱】(神奈川県箱根町)
“本に囲まれ暮らすように滞在する”がコンセプトのブックホテル。館内には巨大な本箱があり、新書から古書まで、およそ1万2000冊の本がある。人気作家や俳優などが選んだ「あの人の本箱」もあり、基本的にはすべてが購入可能だ。箱根は何度も行ったことがあるという上級者でも、こんなホテルで読書に没頭して過ごすのもいいかもしれない。
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