北海道を中心にセイコーマートを展開する「セコマ(北海道札幌市)」だ。同社は2011年度以降、今回を含めて8回ナンバーワンの座を獲得。 人口が1000人以下の過疎地にも出店し、地域に欠かせない生活インフラとしての役割を果たしていることが、圧倒的な顧客支持を得ている一番の理由だ。 人口減・高齢化社会を先んじて経験する北海道にあって、大手各社とは異なる独自の戦略でしたたかに生き抜くセイコーマート。転機に差しかかった全国チェーンのコンビニ業界を横目に、地域密着・持続可能な店舗づくりを追求し続ける、北の最強コンビニのビジネスモデルにフォーカスする。
一方、人口の少ない地域でも出店・経営を可能にするのがセイコーマートの強みだ。たとえば、紋別市の上渚滑(かみしょこつ)店は、高齢者を中心に近隣住民が900人ほどの過疎地区にある。
店の営業時間も午前6時半~午後9時と短いが、客単価は一般のコンビニの1.5~2倍で、2017年の出店以来、黒字経営が続いているという。
店舗の直営化で地域事情に合った効率運営を実現
では、セイコーマートはいかなる戦略で、過疎地・時短営業でも持続可能な店舗づくりを実現しているのだろうか。
そのひとつが、店舗の直営化である。大手チェーンは95%以上が、オーナーと契約するフランチャイズ(FC)加盟店であるのに対し、セイコーマートは約8割が自社経営の直営店だ。
以前は同社でもFC契約による出店がメインだったが、過疎地では加盟店オーナーのなり手が少なく、アルバイトの確保も難しいという事情がある。
オーナーの高齢化で店舗経営が立ち行かなくなれば、地元のニーズがあっても閉店するしかない。そこで同社は、地域を支える店舗づくりという視点から、高齢オーナーの店を引き継ぐなどして直営店を増やしてきたという。
ここ最近、大手チェーンの24時間営業問題で明らかになったように、コンビニ運営で大きなハードルとなるのが、深夜営業と人手不足(人件費高騰)である。
そうした課題を抱えつつ、大手チェーンのFC加盟店では本部指導による画一的な店舗運営が強いられ、経営に行き詰まったオーナーは疲弊しきっている。
一方、直営店が8割を占めるセイコーマートでは、各店の地域事情や現場サイドの要望に合わせて、本部が店舗運営をコントロール。
深夜人口が少ない地域も多いため、24時間営業しているのはFC店を含め250店ほどで、過疎地では正月に休業する店もある。また、店舗スタッフの病欠などで人手が足りなくなれば、本部や他店からヘルパーを派遣して対応。
こうした本部主導の柔軟な施策により、店舗運営の最適化を図りながら、スタッフの負担も軽減することができるのだ。
企業としての収益源を多様化する事業モデルを構築
とはいえ、直営店方式ではオーナーからの加盟金やロイヤリティの収入は見込めず、店舗の運営費や人件費、初期投資なども本部が負担しなければいけない。企業としてはいかに店舗経営のコストを抑え、収益を生み出すかが課題となる。
そこで、セコマ本部が取り組んできたのが、SPA(製造小売業)としての事業モデルづくりだ。
すでに同社では、道内に自社農場や20を超える製造工場を展開し、道内産の原料を使った牛乳・飲料・パン・弁当・菓子・即席麺など、デイリー商材のプライベートブランド(PB)商品を一貫生産する体制を整備。
人気のPB商品は、ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスなどにも卸しており、セコマグループの売上高約2000億円のうち、外販比率は約1割に達するという。
店舗で販売する商品を自社で製造すればコスト管理がしやすくなり、メーカーとしても利益を稼げるというわけだ。PB商品の製造を社外に委託する大手チェーンとは、ここが大きく異なる。
次のページ地域や災害時の社会インフラを担うコンビニとして
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2015.07.10