家族や親族が亡くなった時、何かとトラブルになるのが「相続」だ。 高齢化社会を迎えた日本では、ますます注目を集めていく手続きのひとつであり、それに伴ったトラブルも増加していくことが予想される。 民法には、誰が相続人となるのか、どんなものが遺産になるのか、そして故人の権利や義務はどのように受け継がれるかなどについての基本的なルールある。民法の中で、相続について規定した部分は「相続法」といわれ、私たちの生活に直結するもっとも身近な法律のひとつだ。 この相続法が昭和55(1980)年以来約40年ぶりに大きく見直され、今年1月から改正内容が段階的に施行されている。7月には主に4つの大きな変更点が施行され、来年も続けて施行されていく予定だ。これまでの相続の手続きとどこが変わっているのだろうか。相続法の大改正について調査してみた。
③自宅の生前贈与が特別受益の対象外に
改正前は、生前贈与した家は遺産の先渡しとして扱われ、その分だけ遺産の取り分が減ってしまっていた。しかし改正後は、結婚20年以上の夫婦なら、配偶者に生前贈与した家は特別受益の対象となり、相続の対象外となることになった。
改正前は、被相続人が、自分の死んだ後に配偶者が困らないようにという考えで家を生前贈与しても、配偶者が受け取る財産の総額は生前贈与しないときと変わらなかった。こうなると、現金の相続などが生前相続された家の分だけ減ることになる。
今改正で、家を生前贈与された配偶者は、結果的により多くの相続財産を得ることができるようになる。生活費が足りなくなったり、家を追い出されたりすることがなくなることを狙っている。
この改正も2019年7月1日に施行された。
④法務局で自筆証書遺言が保管可能に
これまで自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、せっかく作成しても紛失、廃棄、改ざんなどの恐れが常にあった。このような原因で相続のトラブルになることを防止するために、今回の改正では自筆証書遺言を法務局で保管する制度がスタートすることになる。被相続人は、安心して遺言を書き、残すことが可能になるわけだ。
施行日は2020年7月10日。
⑤特別寄与した法定存続人以外が金銭請求可能に
法定相続人ではない親族、例えば子どもの配偶者などが、被相続人の介護や看病を献身的に行ったなどのケースに適用されるのがこの制度改正。改正前は、法定相続人ではないということだけで遺産の分配がされなかった。これがトラブルの原因にもなっていた。
これに対して今改正では、介護や看病などの貢献分を、他の相続人に請求できるようにしている。「特別寄与料」という名目で請求できるもので、仕事を辞めてまで介護に専念したという貢献度が必要とされる。金額はヘルパーなどに委託した場合の料金などが参考となる。
施行日は2019年7月1日。
⑥配偶者の短期居住権を新設
これまで、配偶者が自宅を相続できないと、すぐに住む場所が確保できないケースがあったが、改正後は遺産分割協議を終えるまで、もしくは最低でも個人の死後6カ月間は、無償で自宅に住み続けることが可能になる。
施行日は2020年4月1日。
相続は生前から時間をかけて準備しよう
ここまで相続法改正の大きなポイントを解説したが、変更点はまだまだある。
相続で余計なトラブルを招かないために、生前から相続についてきちんと学び、しっかり準備するようにしたいものだ。税金の制度なども複雑に絡み合う問題なので、専門家や自治体の相談窓口などを賢く利用することも大事だろう。
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