ミドル・シニアのキャリア考~分業化のもとで自分をひらく人/閉じる人

画像: Career Portrait Consulting

2019.07.13

組織・人材

ミドル・シニアのキャリア考~分業化のもとで自分をひらく人/閉じる人

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ビジネス社会において、分業システムはますます高度化・細分化しています。働く私たち1人1人も、ますます限定的な分野の仕事で食っていくことになります。あなたにいま与えられている分業役割は、キャリアの海の表層を渡るいっときの小舟でしょうか? それとも、キャリアの大地を深掘りしていく鋤・鍬でしょうか?

分業にこぢんまりと安住する意識は要注意

ミドル・シニア層のキャリア形成に影響を与える要素はいろいろありますが、その最大要素の1つである「分業」について、私見を述べたいと思います。まず結論を図にまとめました。



中高年になってキャリアに行き詰まる人の多くは、与えられる分業役割(部署・職種・職位・担当業務)をそつなくこなすことに自己の有能さを感じる傾向があるように思われます。分業役割という枠に自分をはめこみ、多少の専門性を身につけて成長感も得ますが、結局のところ、彼らにおいては雇われ口を確保することが主たるキャリアの関心事になっています。喩えて言えば、分業役割を船のようなものとしてとらえ、それをできるだけうまく乗り継いで定年までいけばよいという態度のように見うけられます。

ところが、分業役割の形はどんどん変わっていきますし、年齢とともに柔軟性がなくなってきて、乗り移れる船の選択肢がだんだんしぼんできます。AI(人工知能)との職の奪い合いにもなります。そこにキャリアの停滞や行き詰まりが起こるわけです。

分業という小舟を乗り継ぎ、雇われ続けることが目的化した就労意識では、もはや自分を全人的に使って、独立・起業しようという選択肢はまったく考えられません。幸運にも定年まで雇われたとしても、リタイヤ後、100歳まで生きてしまうかもしれない自分に、何かいきいきと活動できることを見つけられるでしょうか。

一徹視理~1つを徹すれば理を視る

分業が決して悪いわけではありません。分業を探究的な使命に転換して広大な世界を発見する人もいます。


私は「一徹視理(いってつしり)」という造語で表現しているのですが、1つのことに徹すれば、その奥に理(ことわり)を視るようなことが起こります。どんな分野においても、その分野を真摯に究める人は、そこから世の中全体に通じる本質や真理を体得するものです。その過程においては、もはや自分を部分的に使うのではなく、全人的にそこに献身する状態になっています。

こういう人は、分業役割というものをまさに鋤(すき)・鍬(くわ)にして、深くにあるものを掘り起こしていこうという姿勢になります。たまたまの配属で任された職種であっても、その道を探究し、その分野を通じて自分の存在をふくらませていこうとする。そうこうするうちにいろいろなものが見えてきて、ライフワークを掘り当てることにもなります。中高年のステージでキャリア形成がうまく進んでいくのはこういうパターンです。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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