金融庁が発表した“人生100年時代に向けた資産寿命の指針”について、議論が沸騰しています。 公的年金を老後の収入の柱とする一方で、若いころからの資産形成など「自助」を勧める内容ですが、年金という「公助」の限界が十分説明されないまま、老後の蓄えとして「2000万円必要」と打ち出した政府の姿勢に、「寝耳に水」と、不満や怒りが爆発した形です。 安倍晋三首相が年金は「100年安心」と述べたのは、年金制度としての持続性であり、年金制度が破たんしないという意味に過ぎません。年金だけでは毎月の赤字額が約5万円、30年分にすると不足するのは約2000万円であり、この数字自体は決して目新しいものではないのです。 金融庁の本意は、今後、公的年金の給付水準が低下していくことが見込まれるなか、不足を補うための投資を促すものです。本稿ではこれを踏まえ、資産形成と資産寿命の核心に迫ります。
2013年4月1日に施行された改正「高年齢者雇用安定法」では、従業員に厚生年金の支給開始年齢の65歳まで雇用機会を確保することを義務付けています。しかし、団塊の世代が後期高齢者となる2025年までには、少なくとも70歳まで働き続けることを前提に、雇用制度や年金制度を変える必要があります。
「人生100年時代」を迎えるにあたって、いつまでも健康で働き収入を得て、豊かな人生を送ることができる……生涯現役の社会がつくられるべきであり、私たちもそれに向けてできることをするべき時代ではないでしょうか。
昨今、注目が高まるキーワード「資産寿命」とは?
ここまで『平均寿命』、『健康寿命』、『職業寿命』の3つのキーワードをご紹介してきましたが、高齢者にとって最も大切なのは健康であることは言うまでもありません。しかし、老後の生活の質を高めるうえで、お金が重要であることもまた自明の理です。
そして、次に登場するキーワードは『資産寿命』です。
『資産寿命』とは、支出が収入を超えたときに、預貯金などの金融資産から不足分を補てんし、保有している資産が尽きるまでの期間のこと。
わが国の金融資産はその総額の約6割を60歳以上の人が保有しているといわれていますが、この金融資産を上手に運用して収益を得ることができれば、それだけ『資産寿命』が延びることになります。
『平均寿命』が延びて長寿化が進めば、当然、将来的に必要なお金が多くなることを意味します。必要なお金が多ければ、それだけ生活水準の高い老後を送れることになりますが、豊かな老後を過ごせるかどうかは、自らの『資産寿命』を計画的にいかに延ばしていくかにかかっている、といっても過言ではないでしょう。
ところが、資産運用について見てみると、日本は保有資産のうち預貯金が多くの割合を占めているのが特徴です。日本人の投資などに対するリスキーなイメージが影響しているためだと思われ、銀行などの金融機関に預けているだけではなく、いわゆる「タンス預金」が占める割合も多いと見られています。高齢者を狙った詐欺が後を絶たないのは、自宅に資産をもつ傾向が強い日本ならではの背景があるのかもしれません。
一方、アメリカではかねてより資産運用が盛んです。株式や投資信託などで運用している率は保有資産の半分程度といわれるほどです。預貯金の利率が増える要素のない昨今、アメリカのように資産を積極的に運用する姿勢をもつことが、『資産寿命』を延ばすポイントともいえるでしょう。
一般的には、退職金を原資として退職後にはじめて資産運用をする人が多いのですが、金融庁の指針では若いうちから少しずつ資産形成に取り組むことを勧めています。
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