自宅にいながらにして、そばや中華料理を電話で注文して配達してもらう……。そんな昭和の時代から続く「出前」がいま様変わりを遂げ、老若男女を問わず大流行中だ。 米国のシェアリングサービス大手のUber(ウーバー)が、日本を舞台に飲食店の「宅配代行」を軌道に乗せたことで一気に火がつき、そこに既存の国内宅配会社も積極的に参入。まさにいま、熾烈なシェア争いが起こっている。その理由のひとつに、秋からの消費税増税後、テイクアウトや出前は税率据え置きの軽減税率の対象になっていることが挙げられる。 ショッピングもスマホで、食事もスマホで……。私たちの生活様式は明らかに大きな変化の過程にあるが、今回は飲食業界で注目が集まっている「宅配代行」の今後の成りゆきについて考えていこう。
出前館は、宅配拠点に新聞販売所を加えて拡大
Uber Eatsの成功は、国内の既存の外食宅配サービス事業者を大いに刺激した。
夢の街創造委員会が運営する老舗の宅配ポータルサイト「出前館」は、以前から外食の宅配サービスを行っていたが、ここにきて「打倒Uber Eats」の動きを加速させている。
たとえば、大手外食チェーンへの積極的な働きかけも「打倒Uber Eats」の一環だ。
牛丼の「吉野家」や「カレーハウスCoCo壱番屋」、ギョーザの「大阪王将」などと次々に提携し、各社とも加盟店として加わった。一方で、地域の個人飲食店の取り込みにも地道に取り組んでいる。出前館サイドの発表によれば、加盟店は1万8000店にのぼり、前年比12.3%増。
2018年夏の調査によれば、直近1年間で1回以上注文したアクティブユーザーの数は269万人にものぼり、その伸び率は4.1%、配達拠点は120カ所を超えている。
また、出前館の取り組みとしてユニークな点は、一部の新聞販売所と契約を結んでいることだ。意外な取り合わせだが、これは朝晩の新聞配達時間をのぞいた昼間の時間帯はそのスペースを有効活用するというアイデアに基づくもの。新聞配達時間をのぞいた昼間などに、従業員には配達要員としてデリバリーを担ってもらおう……という出前館の配達拠点に新聞販売所を組み入れたものだが、新聞配達を行う側にとっても、空き時間を利用したいい副業となっている。
ライドオンエクスプレスや、ぐるなび、すかいらーくも
出前館のほかに、ライドオンエクスプレスや、ぐるなびの動きも注目されている。
ライドオンエクスプレスは出前寿司で有名な「銀のさら」と組んで、宅配サービスに積極的に乗り出した。またぐるなびは、出前、宅配、デリバリーの総合サイト「ぐるなびデリバリー」に加え、弁当を中心とした名店の味を手軽に注文できる「ぐるなびデリバリーPremium」を新たに展開している。
ちなみにこちらは宅配代行ではないが、すかいらーくは、グループ各社の「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」「夢庵」「魚屋路」など国内3200店舗のうち約1000店舗で、自前で料理の宅配サービスを始め、今後の宅配需要の拡大を見込んでいる。これは人材派遣会社と提携し、配達人員を柔軟に確保できるように体制を強化したもの。2020年までに宅配サービスを利用できる店舗を、5割増の約1500店舗へと一気に増やす強気の計画を打ち出している。
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