「食券制が松屋の魅力」「会計を待たなくていいから、食べ終わったらすぐ帰れる」――こんな基準で牛丼チェーンを選ぶ人もいるのでは。 松屋はほぼ全店で券売機を導入しているのに対し、吉野家とすき家では店員が注文を聞いて会計も行うスタイルにこだわっていた。また、大手ラーメンチェーンの日高屋が券売機の導入を本格的に進める方針を打ち出している。 外食チェーンにとって、券売機とはどのような存在なのだろうか。
券売機のメリットとデメリット
券売機を導入する一般的なメリットとデメリットはなんだろうか。飲食店コンサルタントで、スリーウェルマネジメントの三ツ井創太郎社長は次のように指摘する。
券売機導入のメリット
- 従業員の不正を防止できる
- 釣銭の渡し間違えを防止できる
- レジ業務が不要になり、人員の効率化が図れる
- ボタンの配置や位置などによってオーダーコントロール(セットメニュー誘導による客単価アップ)ができる
- お客が自分で商品を選ぶため、オーダーミス(聞き間違い)を防止できる
- 販売データが取得できるため、さまざまなマーケティング分析が可能になる(POSレジがあれば券売機でなくても可能)
券売機導入のデメリット
- 会計業務がないため、顧客接点が減り、サービス力の低下が懸念される
- 前会計のため、ピークタイムには券売機前の渋滞が発生し、機会ロスにつながる恐れがある(店内が混んでいると勘違いされる)
- 導入コストが掛かる
- 追加オーダーを獲得することが難しい
また、三ツ井氏は券売機が向く業態と向かない業態があると指摘する。
「ラーメン、かつ丼、牛丼など追加オーダーがない業態は券売機との親和性が高いです。一方、居酒屋やレストランのように、ドリンクやデザートなどの追加オーダーを獲得することで客単価アップを実現している業態は、券売機が向きません。接客力に対しての期待値が高い業態でも、券売機は向きませんね」
日高屋が券売機の導入を本格検討する理由
さて、一般的な券売機導入のメリット、デメリットを踏まえたうえで、大手チェーンがどのように対応しているのか見てみよう。
日高屋は19年3月~20年2月にかけて券売機を試験的に導入する予定だ。19年2月以降に新規オープンする店舗には券売機を原則的に配置するだけでなく、既存店でも少しずつ導入していくという。
日高屋は店員が注文を聞いて会計も済ますというスタイルを貫いてきたが、10年以上前に券売機を試験的に導入したことがある。しかし、アルコールを中心に売り上げが落ちたため、本格的に活用するまでには至らなかった。広報担当者は「食事をしながらお酒を飲んでいるお客さまが、追加のお酒を注文しようとした際、わざわざ券売機まで行くのが面倒に感じたことが原因の1つだったのではないでしょうか」と振り返る。日高屋の売り上げに占めるアルコールの割合は2割弱となっているので、券売機による売り上げ減少の影響は無視できないものだったわけだ。
次のページ吉野家が店員の接客にこだわる理由
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2010.03.20
2015.12.13