ものやサービスの値段は時代によって変わるものです。「高い」「安い」の基準になっている貨幣の価値も時代によって大きく変わります。 今記事では、これまでさまざまな分野のものやサービスの「お値段」を比較してきましたが、あと10日ほどで4月。4月といえばピカピカの1年生のかわいらしい姿を街のあちこちで見かける季節ともいえますので、13回目となる今回のテーマは「ランドセル」です。 鉛筆などの文房具と同じく、ランドセルも近代の学校制度に伴って広く使われるようになった一種の学用品です。小学校へ入学するとき、新しいランドセルに感じたワクワク感を覚えている方も多いことでしょう。では早速、ランドセルのお値段の変遷を大ざっぱに追ってみましょう。
「男子は黒、女子は赤」は、もう通用しない
現在の傾向として、小学校入学を控えた子どもの親が、前年の春ごろからランドセルを購入するための準備にいそしむことを「ラン活」と表現していますが、ひと昔前までのランドセルといえば、男子は黒、女子は赤という考え方が普通でした。
しかし現在では、カラフルなランドセルが作られるようになっています。そのバラエティは豊富で2001年からは24色揃うブランドもあり、女の子がブルーのランドセルを使用し、男の子がワインカラーのランドセルを使用していることも多くなっています。
現在では少子化を反映して生産高も落ちていますが、逆に好みが多様化。消費全体に共通していることですが、大量生産、薄利多売は以前の時代の話であって、ランドセルも「一点もの」「他の児童とは違うもの」を求める傾向が強まっています。
さらには、恵方巻き、バレンタイン、ホワイトデーなどのイベント商戦と同様に、ランドセルも季節商戦の一角を担う存在となり、店頭に色とりどりのランドセルが一斉に並ぶ光景は、まるで春の花が一斉に咲き誇るかのよう。
なにはともあれ、多品種・少量生産という相反する条件下でランドセルを製造し、売上を確保していかなければならないことは、生産側にとって大変な労苦といえるでしょう。
そうした労苦の中でも生産側はあれこれ工夫を凝らし、なかには手作りの高級品やブランド名を冠したものも登場しています。そうした商品のお値段は、簡単に10万円を超えるものとなっています。
その一方で、デジタル教科書、デジタルノート(タブレット)などが今後広く普及すれば、現在のような大きなランドセルは不要ではないか、という意見も出ています。そうした意味で考えていくと、ランドセルそのものはなくならないにせよ「より高級化」「さらなる少量生産」に拍車がかかっていくかもしれません。
ランドセルだけでなく、気になる学習机のお値段は?
さて、ランドセルとともに小学入学時に必要なものとして学習机があります。就学とともに子どもに机を与えるという習慣は、おそらく戦後に定着したもののようです。そのためか、学習机の価格の記録が明確に残っているのも戦後のこと。
前回の東京オリンピックが開催された昭和39(1964)年には、引き出しと椅子がセットになった学習机が発売されていていて、お値段は9900円。現在価格で数万円といったところでしょうか。
オリンピック景気にわく日本では多くの家庭で教育熱が高まり、宿題や受験勉強の一般化が進み、「子ども部屋」が与えられるようになっていきます。その影響もあってか昭和50(1975)年になるとお値段はぐっと上がって、学習机のお値段は2万円以上が当たり前になっていきます。
この頃になると子どもの成長に合わせてさまざまな機能が学習机に付加されるようになります。「机の高さを変えられる」「本棚や蛍光灯が組み込まている」「引き出しに鍵がかかるようになる」「鉛筆削りつき」……など。あるいは当時大人気の「仮面ライダー」や「ハローキティ」などのキャラクターがデザインされた学習机も登場。
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