アルコール飲料全体の消費量は減少しているにもかかわらず、ウイスキーは増加傾向。宴会スタートの乾杯もビールではなくハイボールで行う人が増えているなど、その人気はとどまることはない。 しかし、人気が高まりすぎて、ウイスキー業界は原酒不足に悩まされるという皮肉な事態になっている。うれしい悲鳴を通り越し、売るものがない状況となっているのだ。この状況を受け、最近はそれを補うべく新しい動きも出てきている。 これまでスコットランドやアメリカ、あるいは国内産など、産地が限られていたウイスキーに、新しい産地が登場してきているのだ。 今回は、ウイスキー好きならぜひとも試してほしい、ニューウェーブのウイスキーを紹介しよう。
ウイスキー消費量は、10年でほぼ倍増
まずはウイスキーの出荷量を、おさらいしておこう。
国税庁の調査によれば、全国のウイスキー消費量は2016年度で1億4500万リットル。2017年と比べて、わずか1年で1000万リットルも伸びている。消費量が上昇に転じたのは2006年だが、この年の7600万リットルから10年少しでほぼ倍増していることになる。
前回の記事「ハイボール人気で、ウイスキーにニューウェーブ登場!? お酒の最新事情1」で説明したように、ここ5年でビールは4800万リットル、日本酒は5600万リットル減少していることから見れば、まさにウイスキーは絶好調といえるだろう。
若者のアルコール離れが声高に言われている中で、ウイスキーだけが右肩上がり。いままさに、ウイスキーはかつてない全盛時代を迎えているのだ。
(前回の記事はこちら:ハイボール人気で、ウイスキーにニューウェーブ登場!? お酒の最新事情1)
あまりの人気が、原酒不足をもたらす
ウイスキー業界にとって、ウイスキーの人気が高まることは喜ばしいことだ。しかし、売れすぎると逆に困ったことも起きる。そう、原酒不足だ。
原酒が不足するということはどういうことか。
需要が高まっているのなら生産量を増やせばいい。単純にそう思うが、ことはそう簡単にはいかない。
ウイスキーは、大麦やトウモロコシなどの原料に水を加え、発酵・蒸留させて原酒を作る。その原酒を樽に貯蔵して十分に熟成させることで、独特の香りや風味が出てくる。果実酒を貯蔵した後の樽を使うことで甘い味わいを作るなど、ウイスキーの旨さを決めるのが貯蔵・熟成の時間なのだ。
この樽に貯蔵する時間は「年単位」だ。よく、ウイスキーのラベルに「○○ 12年」や「○○17年」など、年数が入っているものを見かけるが、この数字は何年熟成させたかという年数を表している。美味しいウイスキーにするためには、最低でも3年程度は熟成させる必要があるとされている。
これに対して、日本酒やビールの製造工程はシンプル。多くの時間を必要としない。つまり、ウイスキーは他のアルコール飲料に比べて、圧倒的に製造時間が長いことが特徴だ。つまり、急激に需要が高まったとしても、すぐに生産量を増やすことができないのだ。
各メーカーが販売休止などで対策
今のウイスキーブームは、10年ほど前にサントリーがハイボールの販売に力を入れ始めたことに始まる。その後、NHK連続テレビ小説『マッサン』の影響で人気が決定づけられた。
この急激な人気上昇を、ウイスキー業界自身が予期していなかったことが今の原酒不足を招いている。それもそのはず、それ以前の20年ほどはウイスキー需要の低迷が続いており、どのメーカーも原酒の生産量を抑えていたのだ。貯蔵に年単位の時間がかかるのだから、一気に消費量が増えても即座に対応できないことは自明の理。
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