ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝とその英国人妻リタをモデルにした、NHKの連続テレビ小説『マッサン』が放映されたのは2014年から15年にかけてのこと。 このドラマをきっかけに始まったウイスキーブームの火はいまだ衰えるどころか、さらに拍車がかかっているようだ。 これに対して、一気飲みの事故などを理由に若者の飲酒ルールが厳格化され、その反動からか、若者が酒を飲まなくなっているとの指摘もある。一方でウイスキーブームがあり、一方で酒離れと、アルコール業界は妙なムーブメントとなっているわけである。 そこで、ビールや日本酒、ワインなど、アルコール飲料全体の最新事情に触れつつ、ウイスキーの新たな動きを、2回に分けて紹介することとする。
「SAKE」と呼ばれる日本酒の拡大のカギは海外進出
日本酒の消費量も減少傾向にある。2016年のデータだが、全国の日本酒出荷量は約55万キロリットル。ピーク時には170万キロリットル以上あったというから、半分以下にまで落ち込んでいることになる。これは驚くべき数字だ。
しかし近年、日本酒は海外に進出し、「SAKE」の名前で人気が高まっている。アメリカへの輸出は過去最高になっており、中国への輸出も昨年度の2.5倍で推移している。また、フランスとの間ではEPA(経済連携協定)が結ばれたため、日本酒の関税が撤廃される予定。これにより日本酒市場は大きく拡大する可能性を秘めている。
外国人にとって日本酒は未知なる酒。最近の日本食ブームもあり、日本酒にも注目が集まるようになっている。東京港区にある「日本の酒情報館」は、日本酒や焼酎、泡盛の情報をさまざまな形で発信しているが、その魅力のひとつは数多くの酒を試飲できること。この情報館を訪れる外国人の数は3倍に伸びているという。いかに外国人が日本酒に興味を持っているかがわかる。
ワインは堅調な伸びに期待大
ワインは2008年以降、確実に出荷量を伸ばしてきた。
□2012年、第6次ワインブームとなり30万キロリットルを上まわる
□2016年は やや減少したものの、約36万5000キロリットルを維持
このように他の酒類に比べて数量を拡大し続けており、10年前と比較すると約5割の増率となっている。
全ワインのうち25万キロリットルほどが輸入ワイン。輸入国はチリ、フランス、イタリア、スペインの順になっている。2017年のチリワインの輸入数量は約5.6万キロリットルで、3年連続で国別輸入数量第1位。過去最高を更新している。
2016年の日本ワイン出荷量は、約1.6万キロリットルで、前年より5.2%増加。国内のワイン流通量のなかではまだ4.8%ほどだが、今後の成長が期待されている。
ちなみに、昨今はスパークリングワインが大人気。輸入量も2010年以降、拡大を続けている。
ハイボール人気で、絶好調のウイスキー
国内アルコール市場で、いま圧倒的に元気がいいのがウイスキーだ。
なんといってもハイボールの人気はすごいものがある。かつては「とりあえずビール」が宴会の決まり文句だったが、最近は乾杯からハイボールという人も多く、老いも若きも、ウイスキー派が幅を利かせている。
おかげで原酒不足を引き起こし、一部の商品が販売休止になったり、高値で取引されるなどの影響が出始めている。気になるウイスキー人気がもたらす新たな動きについては、次回で紹介しよう。
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