ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝とその英国人妻リタをモデルにした、NHKの連続テレビ小説『マッサン』が放映されたのは2014年から15年にかけてのこと。 このドラマをきっかけに始まったウイスキーブームの火はいまだ衰えるどころか、さらに拍車がかかっているようだ。 これに対して、一気飲みの事故などを理由に若者の飲酒ルールが厳格化され、その反動からか、若者が酒を飲まなくなっているとの指摘もある。一方でウイスキーブームがあり、一方で酒離れと、アルコール業界は妙なムーブメントとなっているわけである。 そこで、ビールや日本酒、ワインなど、アルコール飲料全体の最新事情に触れつつ、ウイスキーの新たな動きを、2回に分けて紹介することとする。
減少傾向にある、アルコール飲料全体の消費量
●酒類販売(消費)数量の推移
国税庁の資料をもとに作成したグラフ(出荷量の推移)からも明らかなように、酒類の販売(消費)数量は、1996年の966万キロリットルをピークに、減少の一途をたどっていて、現在はピーク時より100万キロリットル以上も落ち込んでいることがわかる。
原因はいくつか考えられる。ひとつは少子高齢化だ。
日本は2008年に1億2000万人以上いた人口が減少し始め、少子高齢化に突入している。飲酒習慣は30歳代から大きく上昇し、70歳代以上で減少する傾向にあるため、まずは少子高齢化がアルコール消費の減少に大きな影響力を持っていると考えられる。
また、成人一人あたりのアルコール消費量も、1992年をピークに減少しており、現在はピーク時の8割程度となっている。飲酒できる成人自体が減少していることに加え、一人あたりの飲酒量も少なくなっているわけだ。
では、アルコール飲料の種類別に近年の傾向を眺めていってみよう。
ビール系飲料は、酒税改定で消費量が増加する?
近年、すっかり人気を落としているのがビール系飲料(ビール、発泡酒、第3のビール)だ。
2008年に第3のビールが発泡酒の売り上げを抜いたことが大きく報じられ、スーパーの店頭で缶ジュースより安価な100円のビール系飲料が売られるようになっている。何より、その違いが複雑をきわめている点も、国の税制改革に翻弄される業界事情が反映されたカタチになっている。
□ビール → 麦芽、ホップ、水、および副原料(笑米・とうもろこし等)を発酵させたもので、酒税額は77円/350mLほど。
□発泡酒 → 1997年に登場。麦芽または麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有するもので、酒税額は47円/350mLほど。
□第3のビール → 2003年に登場。麦芽比率50%未満の発泡酒。酒にスピリッツを加えたものでエキス分が2%以上のもので、酒税額は28円/350mLほど。
しかし、2006年に行われた税制改革で、第3のビールの税率がアップしたことで、麦を使った発泡酒にスピリッツ(蒸留酒)を混ぜたビール用の味わいに仕上げた飲料が新登場。これにより「第3のビール」は「その他の醸造酒(発泡性)」と呼ばれるように。
そして、ビール大手5社が発表した2018年の出荷量は、前年比2.5%減の3億9390万ケース(1ケースは大瓶20本換算)で、14年連続で最低を更新。1992年の統計開始以来、初めて4億ケースを割った。
原因は消費者の酒の好みの多様化に加え、2018年は豪雨や地震で物流が滞ったことも理由にあるようだ。やはりビールは、真夏の太陽が照りつけないと消費が増えないのだ。ただ、ビールが前年比5.2%減、発泡酒は8.8%減だったが、第3のビールは3.7%増だった。プラスになったのは5年ぶりのこと。キリンビールの「本麒麟」のヒットや、プライベートブランドの拡大などが要因だ。
今後、ビール系飲料は段階的に酒税が統一されるため、ビールは引き下げ、発泡酒、第3のビールは引き上げられる方向。割安感が出れば、本来のビールの消費量も増加傾向になるかもしれない。
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