プロ野球2019年シーズンの開幕も目前に迫り、連日、オープン戦やキャンプの様子が報じられている。 ファンにとってはひいきのチームや選手の調子が気になると同時に、シーズンが始まるまでのワクワク感がどんどん高まる時期でもある。 さて、近年はその春季キャンプを、沖縄で行うチームが圧倒的に多い。かつては宮崎や高知などにも多くのチームが訪れたが、いつの間にか沖縄に集中するようになった。温暖な気候かつ施設が充実する沖縄は、いまやプロ野球キャンプのメッカとも言える地域なのだ。 プロ野球球団がキャンプを行うとなれば、多くの人やモノが移動するし、キャンプを見学しようと多くの観光客も訪れる。つまり、大きな経済波及効果があるわけだ。そこで今回は、なぜ沖縄がプロ野球のキャンプ地に選ばれるのか、それによって沖縄がどれほどの経済的恩恵を受けるのかについて考えてみよう。
実は2月の宮崎は案外寒い。天気が悪ければ気温10度を下まわることもあり、これではなかなか野球ができる環境にならない。
逆に、ハワイやグアムなどは暑すぎることが問題に。キャンプの主な目的は、一年を通して戦える体力づくり。連日30度を超えるような環境では、暑すぎては逆に体力を消耗し、質の高い練習ができないのだ。また、寒い日本に帰ってきたときの寒暖の差で、体調を崩す選手も多かった。
その点、沖縄はちょうどよかった。
宮崎よりも暖かく、ハワイやグアムほど暑すぎない。また、各球団の本拠地とも近く、時差もない。ただ、沖縄にも問題はあった。2月は意外にも雨が多いこと、そして施設が十分でなかったことだ。
沖縄がまだ日本に復帰する前にキャンプを行ったチームがあったが、雨にたたられ、しかも屋内練習場などが整備されていなかったため満足に練習できなかった。これがトラウマとなり、その後、沖縄でキャンプをするプロ球団はなかなか出てこなかったのだ。
しかし、1979年に日本ハムが名護でキャンプを行ったことを機に、沖縄でのキャンプが少しずつ見直されるようになり、沖縄県内の各自治体はプロ野球キャンプを誘致しようと、施設を充実させていった。今では沖縄の小さな自治体のいたるところで、立派な屋内練習場やブルペンなど、最先端のスポーツ施設がいくつも見られるようになっている。
プロ野球キャンプによる、沖縄の経済波及効果
さて、プロ野球のキャンプが沖縄に集中するようになり、どれほどの経済波及効果を生み出しているのだろうか。
りゅうぎん総合研究所の調査によれば、2018年のプロ野球のキャンプに訪れた延べ観客数は約37万7000人で、過去最高となった。天候に恵まれたことや注目選手が多かったことなどから、観客数は前年より約2万8000人増加したとされている。しかも、このうち県外からの観客は約8万4000人で、前年より1万3100人も増加したと推測されている。
これにより、沖縄県内のプロ野球春季キャンプの経済効果は、122億8800万円となり、2017年の109億5400万円を上まわり過去最高となった。
経済効果を産業別にみると、
□宿泊業が22億5600万円
□商業が15億5000万円
□飲食サービス(飲食店など)が15億200万円などだ。
通常、2月は経済が停滞する時期であり、沖縄観光もオフシーズンであるはずだ。にもかかわらず、ハイシーズンにも迫ろうというほどの観光客が押し寄せ、賑わっている。つまり金額以上に大きな影響があると言えるだろう。
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