QUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の勢いが止まらない。
画像はCD「クイーン・フォーエヴァー ベスト・オブ・ラヴソングス」ジャケットより
●音楽映画独特のフェス感覚
あらゆる年齢層が楽しめる映画鑑賞をさらに盛り上げているのが、IMAXなどを駆使した臨場感たっぷりの応援上映だ。映画『ボヘミアン・ラプソディ』の巨大スクリーンで演じられるQUEENの歌や演奏に合わせて観客も立ち上がり、いっしょに歌い、応援の声を上げている。これらは、今の若い人たちに根づいている屋外コンサートの夏フェス感覚に近い。演じられるのは懐かしいヒット曲だが、ノリは現代的なフェス感覚で楽しめる。一気に観客のすそ野が広がっている。
そして若者たちは、SNSなどでどんどんその感動を拡散し始めた。たとえば「最後の20分のコンサート場面は特筆もの」とのつぶやきが広がり、その情報を得た人々が映画館に足を運ばざるを得ない状況になっている。
画像はYouTube 「Queen – Live at LIVE AID 1985年7月13日」より
ちなみに、最後の20分のコンサート模様は、YouTubeで1985年当時のQUEENの本物のコンサート(Queen – Live at LIVE AID 1985年7月13日)と見比べることもできる。Live at LIVE AIDは、数々の大物ミュージシャンが登場する20世紀最大とされるアフリカ難民救済のチャリティ・コンサート。
米国フィラデルフィアのJFKスタジアムと、英国ウェンブリースタジアムで交互中継される方法で12時間同時中継されたライブは、世界84か国に放映され、約19億人が視聴されたといわれている。さらに、大物ミュージシャンひしめく豪華な顔ぶれの中で、最も高い評価を得たのがQUEENとも言われているが、映画では観客で埋め尽くされたスタジアムの熱狂的な様子と、ステージ上での高いパフォーマンスがあまりにもリアルに描かれていて、こちらも大いに話題になった。
●マイノリティーの苦悩を描いた本格ストーリー
そしてこの映画『ボヘミアン・ラプソディ』の芯を支えているのは、単純に音楽を楽しむ映画ではなく、すぐれたストーリー展開の力だ。難民の子として生まれたフレディ・マーキュリーは、その生い立ちや容姿にコンプレックスを持ちながらも音楽の才能で時代の頂点までのぼり詰める。
しかし、私生活では女性に恋をしながら、一方で自分がゲイであることから逃れられず、最後はエイズを罹って45歳という若さで亡くなる。
同じロックで活躍したバンドでも、ビートルズやローリング・ストーンズといった英国の王道のロックグループとは一味ちがう、マイノリティーとしての悲哀を感じさせるロックグループがQUEENだった。
映画は、そうしたQUEENの足跡をまるでドキュメンタリーのようにたどっていく。新作の誕生とメンバーの苦悩がリンクする場面などでは、多くのファンが音楽を聴きながら感動に震える。
この映画は音楽だけでなく、実話をベースにしたストーリーとしても秀逸なのだ。
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