QUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』の勢いが止まらない。
昨年11月に封切られた後、年が明けても映画館にはファンが押しかけ、1月下旬にはついに興行収入100億円を突破した。
映画のタイトルにもなった「ボヘミアン・ラプソディ」は、1975年リリースの古い楽曲。製作初期段階に16分の長さだったものを6分の楽曲にしたものの、当時は3分ほどのヒット曲が多かった時代。そのため「ラジオでかからない曲はヒットしない」とプロモーションサイド酷評を受け、さらに、曲の中にタイトルのボヘミアン・ラプソディが出てこない、アカペラ、バラード、オペラ、ハードロック調で構成されいる、曲の中で次々と登場する謎のキーワード、暗喩めいた歌詞……など、不思議な色合いに満ちた曲だ。
映画の中でも曲中に登場するキーワード「ガリレオ」のフレーズがオーバー・ダビングされる様子が描かれているが、それにしてもこの音楽映画が、なぜそんなに多くの人々の心に刺さったのか、そのわけを探ってみた。
公開12週目で100億円、750万人突破
『ボヘミアン・ラプソディ』が公開されたのは2018年の11月9日。久しぶりの本格的な音楽映画で、70年代のオールドQUEENファンにはきっと受けいれられるだろうと、映画関係者は期待したという。
ところが、その予想はいい意味で裏切られた。
公開当初こそ中高年男女の姿が目立ったが、すぐに観客層は下へ下へと広がり、やがてあらゆる年齢層が映画館に押し寄せるようになった。
映画関係者がまず驚いたのは、この映画、公開第1週の週末から5週目まで連続して興行収入が上がり続けたことだ。普通は、それまでのあおり宣伝などで公開最初の週に売り上げ最高を記録し、あとは徐々に落ちていくものだ。それがこの映画、週を追うたびに映画館に出向く人が増えていったのだから珍しい。SNSなどによる口コミ効果が影響したのだろう。
観客動員の勢いは年が明けても衰えず、1月27日までの週でついに興行収入100億円を突破。『ボヘミアン・ラプソディ』は、2018年に公開された映画で最大のヒット作品となった。サントラ盤などの関連CDやDVDも合計100万枚を突破し、まだまだ勢いは止まらない。1月に発表になったゴールデングローブ賞では、最優秀作品賞と、最優秀主演男優賞のダブル受賞を果たしている。
それにしても、なぜこんな大ヒットしたのか?
●大人から若者までみんな楽しめる
ロックグループ「QUEEN」が活躍したのは1970~80年代まで。当時異端ともいわれたフレディ・マーキュリーを中心に発表した曲は次々にヒットし、世界中で愛された。そしてその多くは、一過性の流行で終わることなく、その後もずっと歌い継がれている。
たとえば「We Will Rock You」や「We Are The Champion」などは、30年以上たったいまでも、テレビのCMやイベントテーマソングなどで頻繁に採用されており、若い人でもほとんど知らない人がいないくらいのスタンダードナンバーになっている。
映画では、これらのヒット曲が物語の中心に据えられて次々と展開される。当時をなつかしむオールドファンのみならず、彼らの子どもや孫たちまでいっしょに楽しめる音楽映画になっているのだ。
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