近年、おしゃれなレストランや温泉宿などで人気が高まっているもの。そう、ジビエ料理だ。 ジビエとは、シカやイノシシ、ウサギなど、野生鳥獣の狩猟肉のことで、山間部では古くから食されていた。最近では、秋から冬にかけての味覚の一つとして注目を集めるようになり、都市部に専門店も増えている。 しかし、ジビエは野生の肉ということもあり、肉の品質や細菌など、衛生面で注意が必要だ。これまでは解体や加工に関するルールがなかったが、今年から全国統一の認証制度もスタート。これを機に、ジビエ料理がもっと身近な存在となっていく可能性も高まるのではないだろうか。現状を調査してみた。
そこで近年は、捕獲された野生鳥獣を、もっとジビエ料理に活用しようという動きが出てきている。農林水産省によれば、ジビエの処理施設は全国に約600施設(2017年度)ある。2008年度は42施設だったから、10年でおよそ14倍にもなっている。確実に流通量は増えてきているのだ。
都市部ではまだまだ手に入りにくい野生鳥獣の生肉だが、山間地では日常的に取り扱うスーパーや精肉店も増えてきている。今後は都市部のスーパーなどでも手に入れやすくなるかもしれない。
ジビエ料理をもっと広めようと、全国の飲食店などが加入する日本フードサービス協会が、農林水産省の支援を受けて「全国ジビエフェア」を開催し、ジビエ料理の浸透に力を入れている。これも多くの人にジビエ料理を知ってほしいという狙いから行われているキャンペーンだ。
また日本ジビエ振興協会では、ジビエ料理のコンテストを開催しており、過去の受賞作のレシピをウェブで公開している。ジビエ料理に家でも挑戦できるようになれば、ジビエ料理はより一般的になっていくはずだ。
安心・安全を目指し、全国統一ルールが誕生
家畜の豚や牛と違って野生鳥獣であるために、健康状態に疑問が残ったり、細菌が付着していたりすることも多い。ジビエの解体・加工するときは衛生管理をしっかりして、加熱して食べることが重要とされている。もちろん、生食は厳禁だ。
しかし、これまでジビエの安全確保や流通に関するルールは曖昧で、独自の認証制度を設けていた自治体が一部にあった程度だった。
例えば長野県は2014年から信州産シカ肉認証制度を導入。捕獲から加工までの履歴を確認できるようにしている。また和歌山県では、ジビエの品質を和牛のようにランクづける制度を導入。肉の品質をイノシシ肉なら3段階、シカ肉は2段階に格付けしている。が、これらは他の自治体では行われていない。
そこで厚生労働省は2014年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を策定。野生鳥獣の捕獲から消費までの各工程での、ジビエの安全性確保のための取り組みを提示した。
さらに、このガイドラインに基づき2018年5月には、農林水産省が野生のシカやイノシシを処理する食肉処理施設の認証を行う「国産ジビエ認証制度」を制定した。
この制度は、解体処理時の衛生管理、各部位の切り分け方、搬入時の個体の状態や枝肉の保管温度をはじめとしたデータ記録の管理などを適切に行う食肉処理施設を認証するもの。これにより、安全なジビエが提供され、消費者のジビエに対する安心も確保されることになる。
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2009.10.31