近年、おしゃれなレストランや温泉宿などで人気が高まっているもの。そう、ジビエ料理だ。 ジビエとは、シカやイノシシ、ウサギなど、野生鳥獣の狩猟肉のことで、山間部では古くから食されていた。最近では、秋から冬にかけての味覚の一つとして注目を集めるようになり、都市部に専門店も増えている。 しかし、ジビエは野生の肉ということもあり、肉の品質や細菌など、衛生面で注意が必要だ。これまでは解体や加工に関するルールがなかったが、今年から全国統一の認証制度もスタート。これを機に、ジビエ料理がもっと身近な存在となっていく可能性も高まるのではないだろうか。現状を調査してみた。
ジビエ料理は貴族のための高級料理
ジビエはフランス語で、「狩猟によって捕獲した野生鳥獣の食肉」を意味する。
もともとはフランスをはじめヨーロッパ各地の広大な領地を持つ貴族たちが、自ら狩りを楽しみ、そこで捕獲した野生鳥獣の肉を調理して食べることから始まったものだ。つまり、貴族の高級な伝統料理として発展してきた食文化というわけだ。
日本にも、猟師が山で捕獲した野生鳥獣の肉を料理する「またぎ料理」などもあるが、こちらは鍋料理など、どちらかといえば素朴な田舎料理。これに対して「ジビエ料理」と言うときには、フランス料理を中心に高級で特別な野生肉料理を指す。
森を自由に駆け回っていた野生鳥獣の肉は、脂肪が少なく引き締まり、栄養価が高い。その肉をはじめ、内臓や血液など、すべての部位を上手に料理し、美味しくいただき、森の生命に感謝するという考え方が、ジビエ料理の根底には流れている。
野生鳥獣による農作物被害の現状
日本国内で、ジビエといえばシカやイノシシなどの肉が代表的だ。
これらの野生鳥獣は、ジビエ料理の食材となるが、農作物に被害をおよぼす害獣でもある。しっかりと駆除しなければ、山間部の農家などに大きな損害を与える。
農林水産省の調査によれば、鳥獣による2017年度の農作物被害は、被害金額が約164億円で、前年度に比べて約8億円減少(対前年5%減)している。被害面積は約5万3000ヘクタールで、これも前年度比約1万2000ヘクタール減少(対前年18%減)、そして被害量は約47万4000トンで、前年比約1万3000トン減少(対前年3%減)している。
また、主な獣種別の被害金額については、シカが約55億円で前年度比約1億円減少(対前年2%減)、イノシシが約48億円で、前年度比約3億円減少(対前年6%減)などとなっている。
年々被害が減少しているのは、さまざまな防止対策を施しているからだ。それでもなお160億円を超える被害が出ているのだから、農家にとっては深刻だ。野生鳥獣による農作物被害によって、農業を続けることが困難になり廃業する人もいるくらいだ。今後も実効性のある被害防止策が生まれてくることが求められている。
徐々に拡大しつつあるジビエ料理
鳥獣被害対策が進み、毎年、捕獲される野生鳥獣の数は増加しているが、その9割以上は焼却されたり、埋められたりしているという。頭数でいえばイノシシは約62万頭、シカは約58万頭(いずれも2016年度)が捕獲されており、それぞれの肉の利用率は捕獲頭数の8%ほどでしかない。まだまだ日本でのジビエ料理は非常にニッチなジャンルと言えるだろう。
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