今年(2019年)1月7日、日本で27年ぶりに新税が導入されたのをご存じでしょうか。その名も「出国税(国際観光旅客税)」。 これは、日本を出国する旅客に課せられる税金で、外国人観光客だけでなく、一般の日本人も一人あたり1000円が徴収されます。 10月からの消費税増税を控え、さらに新しい税金と言われても、あまりうれしいものではありませんが、いったい何のための税金なのでしょうか。この機会に押さえておきたい「出国税」の仕組みについて解説します。
航空機や船舶のチケット代に上乗せする形で徴収
1992年に導入された「地価税」以来、27年ぶりの新税となる「出国税」。正式には「国際観光旅客税」と呼ばれ、今年1月7日以降、日本を出国する旅客に対して一人あたり一律1000円が課せられます。課税分の1000円は、航空機や船舶のチケット代金に上乗せする形で徴収されますので(1月6日までに購入したチケットは免除)、別途に個人が支払う必要はありません。それぞれの旅客から徴収した税金は、航空会社や国際旅客運送業者がまとめて国に納付する仕組みになっています。
航空券には燃油サーチャージや空港使用料、旅客保安料など、さまざまな名目の料金が加算されており、購入のタイミングやシーズンによっても価格が変動しますので、1000円が加算されても気づかないかもしれません。とはいえ、出国税は一人ずつ徴収されますので、家族4人で海外旅行へ出かけると、1回あたり4000円の出費増に。仕事などで1年に何十回と海外へ出張する人は、年間あたり数万円単位の負担増になります。海外へ行く回数や一緒に行く人数が多いほど、税金の負担感が重くなりそうですね……。
出国税の免除対象者・非課税になるケースとは?
観光・ビジネスなどの目的や国籍を問わず、日本を出国するほとんどの人が対象となる出国税ですが、一部の人やケースについては課税の対象外となります。
【出国税が免除される人・非課税になるケース】
◎2歳未満の乳幼児
◎入国して24時間以内に出国する乗り継ぎ客・通過客
◎緊急着陸などで入国した場合の出国
◎悪天候などの理由で帰国した場合の出国
◎飛行機や船舶の乗務員など、旅客(旅行客)に該当しない人
◎公用機・公用船での出国者
◎大使や国賓、公用で日本に派遣された外交官や領事館員
新税の導入・活用で、さらなるインバウンド増加に対応
では、出国税は何の目的で導入され、どのような使途に充てられるのでしょうか?
ここ最近、メディアなどでも報道されているように、日本を訪れる外国人観光客は年々増加しており、2018年には3000万人の大台を突破。1000万人を超えた2013年以降、過去最高を更新し続け、この5年間で約3倍にまで拡大しています(グラフ参照)。観光が日本の一大産業・経済成長の主軸となる中、さらなるインバウンド増加に向けたインフラ整備を行うために、新税を導入して活用していこうというわけです。
出国税の目的・使途ついて政府は、「観光基盤の拡充・強化を図るための恒久的な財源を確保するため」と説明。旅客税の使い道などを定めた国際観光振興法によって、以下の3分野における活用を掲げています。
1・ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
2・日本の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
3・地域固有の文化・自然等を活用した観光資源の整備など
次のページ年間あたり約500億円の税収をいかに有効活用するか
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