目で文字を読む読書──。 当たり前だった読書スタイルが一部で覆されつつある。CMなどでもご存じの通り、本を“耳で聴いて”楽しむスタイルが、ここにきて静かなブームを巻き起こしている。 それにしてもいったいなぜ……? そして、どんな楽しみ方が生まれているのか。新たな読書スタイルの流行の現場を探ってみた。
人気声優やBGM付など、驚きのコンテンツ内容
オーディオブックブームの理由は、上記のようなハード面の充実だけでなく、ソフト面の充実も大きく影響している。
たとえば文芸書などでは、以前であれば一人のナレーターが一冊分を淡々と朗読するのが普通だったが、最近のオーディオブックは大きく様変わりしている。複数の出演者が、それぞれのキャラクターを演じ分けることも当たり前で、さらにBGMや効果音なども充実。作品の世界観を臨場感たっぷりに演出しているのだ。それはまるで、ラジオドラマのような充実ぶりだ。なかには人気の声優が出演している本まであり、内容もさることながら、出演声優のファンが購入して楽しんでいるケースもある。エンターテナーとしてひと皮むけた感がある。
こうした内容充実に合わせて、昨年2018年11月には、面白い実験企画も実施された。
それは、オトバンクとタクシー会社の共同コラボレーション企画された「本のない図書館タクシー」だ。どんな企画かというと、東京23区、武蔵野市、三鷹市限定で、予約したタクシーに乗車すると、そこで本を聴きながら目的地まで移動できるというサービス。タクシー内でただボーっとするのではなく、その時間も充実させようというアイデアだ。実際に体験した人の話によれば、思いがけないサービスに驚いて、好評だったという。
オーディオブックが抱えるデメリット
こうして一気に普及し始めているオーディオブックだが、いくつか見逃せない欠点もある。たとえば致命的なのが、図版や絵を見ることができないことだ。
最近の本は、活字離れが影響しているせいか、わかりやすい図版や表組などで内容を補足、解説しているケースが多い。しかし、オーディオブックでは、それは苦手のジャンルだ。もちろん声で、図版の内容を解説することも可能だが、一目瞭然という感じで理解してもらうのは難しい。
似たような理由で絵本やまんがも、絵の部分を声で解説する必要があるため、オーディオブックではエンジョイしてもらうのが難しい。ただしまんがでは、一部で声優がキャラクターを演じ分けることにより、オーディオブックとして製品化されているものもある。
もう一つの欠点としては、聴く人によっては、本の内容が頭の中に入りにくい点だ。耳で聴く読書は、目で活字を追うよりどうしても集中力に欠けることになる。とくに、何かをしながら本を聴くとなると、どちらかがおろそかになり、せっかく耳で聴いた本の内容が理解できなかったというようなことが起こってくる。
次のページ市場に出回る本の数は少なく、まだまだ過渡期
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