どんな街にもあたり前に店を構えていた書店が、恐ろしいくらいのスピードでいま次々に倒れている。 インターネットの普及で深刻な打撃を受けた業界の一つが書店といえるが、米国国内でも同様にリアル店舗が閉店に追い込まれている。その現象を「アマゾン・パニック」と呼び、その小売店の変転数は昨年だけで1万2000店舗を超え、チェーンストアも大量閉店に追い込まれているという。 一方の日本でも小売店が閉店に追い込まれているが、書店も例外ではない。が、しかし、懸命に未来に目を向けて頑張っている書店もある。ユニークな作戦で生き残りを図っている書店を紹介しよう。
入場料を払って、じっくり本と親しむ新感覚書店「文喫」
悲劇的なリアル書店の実態ばかりが強調される昨今だが、しかし、ただ“座して死を待つ”というばかりではない。生き残りを懸けたアグレッシブな戦いに挑んでいる書店も、実はたくさんある。
たとえば、2018年12月にオープンしたばかりの「文喫」がそうだ。
前述した六本木の青山ブックセンターの跡地(東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1階)に、大手取次会社日本出版販売(日販)が自ら手がけた書店で、なにしろユニークなのが「入場料制」という点。
入り口で1500円を払ったら、とりあえず飲食受付のコーナーでコーヒーやお茶のサービスを受け、好みの席を確保。一人がけソファーでもよし、閲覧室の書斎風の席でも自由だ。落ち着いたら、じっくり本を探す。9時〜23時まで好きなだけ滞在していていいので、あわてることなくじっくり探せる。
本の点数は約3万冊。食やファッションなどのカルチャーものから、ビジネス書、歴史、科学、文学など、あらゆるジャンルの良書を取り揃えている。気に入ったものを手に取り、コーヒーを飲みながらとりあえず読む。もちろんそこで読み切ってもOKで、手元に置きたいと思う本を厳選して購入することもできるし、気が進まなければ購入を見合わせてもいい。本探しに疲れたら、昼食時や夕食時にはオプションでカレーやパスタを注文して、食事することもできる。
「文喫」の名の由来は、文を喫する、書物を愉しむ
こうなると、書店というよりは、むしろくつろぎの空間に本が主役として展開されているといってもいい感じだ。「文喫」という店名は、文を喫する、書物を愉しむ、というところからきているのだそうだ。
昨年からの年末年始はかなりの客が押し寄せたというから、まずは上々のスタートといえるだろう。
ただし、この1500円という額については賛否両論ある。入場するためだけにこの金額を払える本好きの集まりなので、おのずと客層はいい。店内はとても静かで、まるで図書館のような雰囲気を備えている。
一方で、もとをとることを考えれば、1時間や2時間の滞在ではもったいない。じっくり時間をかけることが大切。つまり本を選ぶことと同時に、くつろぎの時間も買っているという意識をもたないと、コスパとしては合わないだろう。ちなみに、店内で新刊の単行本一冊を読み切ってしまえば、ほぼ入場料は取り戻せたことになるのだろう。
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