飲食店に予約を入れたにもかかわらず、当日になっても連絡なしに来店しない……いわゆる「無断キャンセル」が社会問題化している事態を受け、ついに国と業界が本格的な対策に乗り出した。 経済産業省は今年(2018年)11月1日、関連省庁や業界団体、弁護士らが参加する有識者会議での議論をまとめた「No Show(ノーショー:飲食店の無断キャンセル)対策レポート」を発表。レポートでは「店舗は無断キャンセルした顧客に損害賠償を請求できる」との指針に基づき、キャンセル料の具体的な算定基準を提示。レポートの指針に法的な強制力はないが、業界初の統一見解として飲食店での活用・普及を呼びかけ、消費者にも理解を求めていく方針だ。 そこで今回は、飲食店における無断キャンセルの現状とともに、私たちも知っておきたい指針のポイントを詳しく見ていくことにしよう。
無断キャンセルによる被害額は年間で約2000億円!?
ここ近年、手軽なインターネット予約の普及などで飲食店の無断キャンセルは増加傾向にあり、急な空席の発生による売り上げ減や、調達した原材料の廃棄による損失など、店側が被る被害は年々深刻化しているという。
経済産業省によると、国内飲食店の無断キャンセルは予約全体の1%程度だが、被害額は年間で約2000億円におよぶと推計されている。今回発表されたレポートでは、無断キャンセルによる飲食店の被害例を挙げ、もはや事業者単独の問題ではないと指摘している。
【無断キャンセルによる飲食店の被害例】
●事例1……無断キャンセルされたことで、本来得られたであろう利益が失われただけでなく、食材費や食材の仕込みに要した人件費・光熱費、当日出勤したアルバイトの人件費などが損失になった。
●事例2……100人の宴会予約が無断キャンセルされたことで、100人分の食材費が無駄になっただけでなく、その廃棄費用も支払うこととなった。
●事例3……予約客が時間になっても来店しなかったため、席を空けて待ち続けた。途中で予約のない客が何組も来店したが、予約客が来店する可能性があったため入店を断った。結局、閉店まで予約客は来店せず、空席を埋めることで得られたはずの収益を得ることができなかった。
予約内容によって定めたキャンセル料金の算定基準
ただ、飲食店が顧客に損害賠償としてキャンセル料を請求するケースはまだまだ少なく、多くの店が泣き寝入りしているのが現状だという。そこでレポートでは、無断キャンセルが店側に不当な損失を与える債務不履行・不法行為に該当するとして、消費者にキャンセル料を請求できると明記。さらに、これまで不明瞭だったキャンセル料の算出基準を以下の2パターンに分けて定め、業界で共有の見解を示すことで、無断キャンセルへの対応力を高める狙いだ。
【コース予約の無断キャンセル】⇒ 全額請求も可能
コース料理が予約内容に含まれている場合、一般的に別の顧客に再販するのが難しいと考えられるため、損害の全額をキャンセル料として請求できる。ただし、転用可能な飲食物(未開封のドリンクなど)や人件費を除くなど、個別の事情を踏まえたうえで損害額を算定する必要がある。
【席のみ予約の無断キャンセル】⇒ 平均客単価の5~7割
席だけを予約して注文は来店後にする場合、転用可能な原材料費や人件費などを除いた金額を損害賠償の対象とする。一般的な飲食店の収益構造から、平均客単価の5~7割がキャンセル料の目安となる。
次のページ無断キャンセル防止に向けた現場の取り組みと消費者の心得
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31