いまやすっかり世の中で認知され、アイディアの実現や目標到達のために、資金を調達するひとつの手段として注目されているクラウドファンディング。 さまざまな業種や職業を越えて挑戦する人、その主旨に賛同し応援する人が増えています。 ある若者の発想から始まったのは、海に漂うプラごみを回収するプロジェクトでした。広大な海を掃除するというプランに驚き、実現不可能だとも言われてきましたが、念入りな計画と検証を続け、2018年9月にとうとうプロジェクトは動き始めました。海洋汚染をこれ以上進ませないために、多くの人の協力を得て実現に向けてスタートした、世界初のプロジェクトをご紹介します。
「太平洋ごみベルト」とは
「太平洋ごみベルト」と言われる地帯は、ハワイとカリフォルニアの間にある約160万平方キロメートルを超える海域で、日本の約4倍の面積にもなります。大きな潮の流れに乗って、世界中から非常に多くのごみがここに集まり、浮遊し続けているのです。
「オーシャン・クリーンアップ」が飛行機を使って海上から研究・調査を行ったところ、そのほとんどがプラスチックごみでした。さらに、プラスチックごみの総重量の約46%は、漁業に使われている網が流された「ゴースト・ネット」だということが判明。この網が海に住む生物にからみついて命を脅かし、プラごみをさらに細かく砕いてマイクロプラスチックごみにしている可能性が高いことがわかってきたのです。
近年、太平洋ごみベルトにおけるプラごみは重量ベースで急激に増えており、その原因に2011年の東日本大震災での津波が関係していると考えられています。
現在のシステム001はどこに?
2018年9月8日にサンフランシスコを出航した「オーシャン・クリーンアップ」の「システム001」は天候に左右されながらも航行を続け、運用テストを行った後、無事に「太平洋ごみベルト」に到着。同年10月19日には装置の設定が完了しました。10月24日にはスラット氏が初めてプラごみを回収したことをツイッターに投稿しています。
プロジェクトで回収したプラごみは船に乗せてサンフランシスコに陸揚げし、欧州でリサイクルされる予定です。海では悪天候による強風や荒波が考えられるため、このシステムについては賛否両論があるようですが、世界中から注目が集まっているのは事実であり、誰も試したことがないシステムです。この記事がアップされる頃には、初めてのプラごみが陸揚げされているかもしれません。
巨大なパックマンがプラごみを食べる
今後、「オーシャン・クリーンアップ」ではプラごみ回収装置を60個に増やし、5年後には太平洋ごみベルトにおける50%のプラごみを回収するとのこと。さらに、2050年までに完全にごみをなくすことを目標に掲げています。
プラごみを放置すれば、波や太陽、ゴースト・ネットによって細かく砕かれ、環境に影響するマイクロプラスチックごみと化すことは周知の事実です。少しでも早くプラごみを回収する、という使命感に燃える若者を支援することは海洋汚染を阻止するひとつの道ではないでしょうか。
「オーシャン・クリーンアップ」のウエブサイトでは、「システム001」の現在地が5分ごとに更新される位置情報のほか、さまざまな情報が掲載されています。クラウドファンディングも引き続き募集中です。また、インスタグラムやツイッターなどのSNSを通じて、誰でも最新の情報を知ることができるので、興味のある方はぜひチェックすることをおすすめします。
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