「ホラクラシー(holacracy)」……あまり耳慣れない言葉だが、欧米の一部企業で導入され話題を集めている企業の新しい組織スタイルだ。 日本のメディアでも、最近注目を集め始めている。 この「ホラクラシー」は、私たちがよく知る社長以下、役員、部長、課長といった上意下達型の中央集権型・階層型のヒエラルキー組織に相対する組織形態で、上司と部下の肩書きがなく、互いに対等な立場で仕事を進めていく新しい組織のことを指す。 最近にわかに注目を集めてはいるが、果たして日本の企業に根づいていくのだろうか。
○効率的な組織運営
そもそもホラクラシーが生まれたのは、硬直して非効率的なヒエラルキーから脱却することが目的なので、効率的こそが重要な肝のひとつだ。各プロジェクトでは、上司からの指示や判断を仰ぐことなく、メンバー自らが実行すべき業務に邁進して役割を果たしていく。当然、意思決定はスピーディーだ。
○生産性の向上
効率的な組織運営は、生産性の向上につながる。ヒエラルキー型の組織では、人の管理や監督も重要な仕事だったが、それらの仕事はなくなるため、無駄なコストが省かれる。すべての社員が自分の役割を理解して、業績向上に努めることになる。
○責任感・主体性の向上
社員一人ひとりに意思決定が一任されるため、仕事に対する責任感が高まり、自主性が育まれて個々の成長が期待される。また、結果が明瞭に現れることも多くなるので、仕事に対するモチベーションアップが期待できる。
○ストレスの軽減
ヒエラルキー型組織の大きな弊害のひとつが社員に加わるストレスだ。上司から理不尽な指示があっても逆らえない。また、出世街道から落ちこぼれれば、落第の烙印をおされ、最悪の場合は心的病気に陥ったり、退職を余儀なくされるケースもある。しかしホラクラシーの組織では、上下関係から生まれるストレスとは無縁だ。
○多様な意見が生まれる
従来の上意下達の組織ではないので、社員が自らの意見を率直に述べることができる。そうした自由な空気のなかからは、ユニークで斬新なアイデアが生まれてくる可能性がある。企業は、こうした柔軟な発想がきっかけで大きな発展を遂げることがよくある。
ホラクラシー型組織が抱えるリスク
いいことづくめのように見えるホラクラシー型組織だが、実際にはリスクや課題も多い。
最大の不安は、組織としてのコントロールが効かなくなる可能性だ。トップダウンの命令系統がなく、社員それぞれに意思決定の権限があるため、業務の進行状況や業績について本人以外になかなか理解されない場合があり、結果として組織のコントロールが不能に陥る可能性がある。
さらに、ホラクラシー組織の欠点はマネジメントの放棄という批判的な意見も少なくない。一般的にマネジメントの対象は「ヒト」「モノ」「カネ」という経営の三要素に「情報」を加えた4つになるが、このうち「ヒト」に対するマネジメントを放棄しているという意見もある。人を管理しないことが組織の維持を困難にすることもありえるという。
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