今年(2018年)8月、札幌市の講演会で「日本の携帯料金は高すぎる。4割程度下げる余地がある」と語った菅官房長官。 その様子はテレビのニュースなどでも報じられ、苦言を呈する異例の発言として話題となりました。 この菅氏のコメントと合わせて、総務省では8月末から携帯料金の引き下げに向けた検証を開始し、2019年末に最終答申をまとめると公表。一方で、巨額の設備投資を控えるNTTドコモ・KDDI〈au〉・ソフトバンクグループの大手3社は、大幅な値下げに慎重な姿勢を示しており、政府と各社の今後の動向に注目が集まっています。
同じく、世界6都市のスマートフォン通信料の推移を見ると、東京は2014年度の価格水準と比べて1割程度の値下がりにとどまる一方、ロンドン・パリ・デュッセルドルフの3都市は7割、ニューヨークは6割、ソウルは3割ほど下がっており、東京の値下がりの鈍さが浮き彫りとなっています(グラフ参照)。
総務省の今回の調査では、上記の一般的な利用ケース(シェア1位のMNO事業者のデータ容量・月5ギガバイト料金プラン)のほか、データ容量2ギガバイト・20ギガバイトプランでの比較や、データ容量を家族4人でシェアできるプランを想定した試算も行われていますが、いずれも東京の高値傾向に変わりはありませんでした。
ただし、サービス内容や品質、契約期間などの諸条件が各都市によって異なるため、価格だけを抽出したデータは一つの参考指標と捉える必要があるでしょう。日本のネットワーク品質が世界でもトップレベルにあることや、地震などの災害が多いという国情を考慮すると、また違った判断ができるかもしれません。
値下げに慎重な大手3社。業界からは懸念・反発の声も
今回の政府の値下げ要求に対して、携帯大手3社は「今後も料金やサービスの見直しを検討する(NTTドコモ)」、「今後もお客様のニーズに応えられるよう、サービスの向上に努める(KDDI〈au〉・ソフトバンクグループ)」とコメント。各社とも値下げに慎重な姿勢を示しつつ、今後の政府の出方に神経をとがらせています。
自社回線をもつ大手3社は、利益の中から毎年3000億~5000億円規模の設備投資をしており、今後は次世代通信規格・5Gの実用化に向けた巨額な整備費用も必要となります。こうした事情から、業界内では「全国の通信網を維持するコストを考えて議論してほしい」との要望や、「過度に各社の利益を圧迫すれば、5Gに向けた投資余力がなくなる恐れもある」と懸念する声も。事業者が決める料金に政府が干渉することについても、あちこちから反発の声が上がっているようです。
市場競争の活発化が値下げのカギに……?
これに対して総務省では、「値下げの強制はできないが、格安スマホ事業者との競争を活発化させることで、結果的に下がってくれれば」と指摘。2019年にIT大手の楽天が「第4の携帯会社」として市場参入し、競争が活発化することにも期待を寄せていますが、どこまで値下げにつながるのかは未知数といったところ。アベノミクスを推進する政権としては、携帯料金の値下げを打ち出すことで国民の支持を獲得しつつ、家計の固定支出を抑えて個人消費の押し上げにつなげたいとの思惑もあるようですが……。
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