いま、三大メガバンクをはじめとする国内の大手銀行で、人員や店舗網のスリム化が加速している。 カウンターの向こうで大勢の行員が働く従来型の大型店舗は減り、デジタル技術で省力化した少人数の軽量店舗や、相談特化型の小型店舗が次々と登場。ネットバンキングやスマホ決済など、フィンテックサービスの導入が年々進み、実店舗への来客数が大幅に減っているためだ。
そのひとつとして今年7月に開設した三井住友銀行・汐留出張所(東京都中央区)は、現金を扱わない相談特化型のコンセプト店舗で、仕事帰りの会社員も利用しやすいよう平日19時まで営業。資産形成・運用などの相談に予約制で応じるほか、専門家によるマネーセミナーなども定期的に開催している。
同じく、りそな銀行も相談特化型の小型店舗を首都圏に23店展開しており、来年度はさらに45店に拡大する予定だ。同行では、不安も多い資産運用などの相談や、スマホ操作に不慣れな高齢者の窓口として、実店舗での対面サービスは不可欠と考え、今後もできるかぎり店舗数を維持していく方針という。顧客一人ひとりとの接点を大切にするこの姿勢は、かつて経営破たんに陥り、顧客目線に立った大改革で起死回生を果たした「りそなイズム」の原点ともいえるだろう。
時代の変化とともに、自らも変わり続ける銀行が勝ち残る
マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツが「銀行機能は必要だが、将来、いまのカタチの銀行は不要になる」と発言し、金融・経済界から一笑に付されたのは1994年のこと。それから20年以上が経過した現在、当時は誰も相手にしなかったゲイツの予言が、にわかに現実味を帯びてきたことは確かだろう。
いま日本の銀行は、日銀の金融緩和によって長期的に金利収益が低迷し、人口減が加速する中で先行きも見通せない状況に置かれている。そこにデジタライゼーションというIT技術の飛躍的な進化が加わり、フィンテックなどのテクノロジーによって金融サービスの概念が大きく変化。Amazonや楽天をはじめとする他業種のプレイヤーも次々と市場参入し、金融マーケットにゲームチェンジを起こそうとしている。
そうした中、かつて駅前の一等地に構えていた大型店舗は、銀行にとって経営を圧迫する負の遺産となりつつある。ここに来て各行ともにインフラ改革を急ピッチで進めているが、50~100年後の未来、銀行自体がどのようなカタチに変わっているのかは、おそらくゲイツにも予測できないだろう。その存在がリアルなのか、バーチャルなのか、あるいはまったく未知な第三の空間に存在するのか……。
いずれにしても、長きにわたって不倒・不変・安定という神話に支えられてきた銀行業界は、いまドラスティックな変革を迫られている。そして、営業効率化とサービスの質的向上という相反する課題を一挙に乗り越え、時代の流れとともに自らも変わり続ける銀行だけが、勝ち残っていくことは間違いないだろう。
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