首都圏での中学受験で鎬を削る二つの大手学習塾サピックスと日能研。両塾が歩んできた歴史を振り返りながら、2008年の中学入試で、なぜサピックスが合格実績で他を圧倒したのかを簡単に分析してみたい。(この記事は、2008年2月に書かれたものです)
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中学入試を大衆化した日能研と、専門店サピックス
ここ10年、首都圏での中学入試は、サピックスと日能研の戦いとなってい
る。かつて栄華を誇った四谷大塚は、この10年で大きく後退してしまった。
しかし、昨年のナガセのテコ入れで、今後四谷大塚は、徐々に力を巻き返すか
もしれないが、それにしても、と思う。今年のサピックスの合格実績は、他を
圧勝し、これまで中学受験をリードしてきた日能研は、この先、生徒集めが苦
しくなるかもしれないと予想させるのに充分なものだった。
サピックスの出自は、東京・八丁堀にあったTAPだ。TAPは、1拠点で
2000名もの生徒を集め、難関校合格に向けて、徹底指導する専門店だった。
サピックスもその伝統を引き継ぎ、難関校合格に圧倒的な力を示している。
それに対し、日能研は、中学入試を大衆化し、学力レンジを広くして多くの
生徒を抱え、難関校から中堅校までの合格を出してきた学習塾だ。
日能研は、20数年前に、神奈川県を脱して、東京・千葉に進出をしていっ
たが、その時のターゲットは四谷大塚で、四谷大塚の難関校の合格実績をひっ
くり返そうと、ゴールデンラインと称して、麻布・栄光・浅野の合格実績を伸
ばして、四谷大塚の牙城を崩し、その地位を確立した。そして、10数年前に
は、首都圏の中学入試を制覇したかのように見えたものだ。
その頃、サピックスは、TAPから分離独立して難関校のほとんどの合格実
績をTAPから奪って、一躍脚光を浴びていた。サピックスは、TAPの1拠点
主義を否定して、多店舗展開に戦略をシフトし、上位層の生徒獲得に動き出し
ていたのである。
専門店の多店舗展開を許した日能研の戦略ミス
この戦略上の変更が、今日の日能研とサピックスの合格競争を決定付けた要
因かもしれない。もし、サピックスがTAPと同じように1拠点主義を取って
いたら、日能研との棲み分けが出来て、中学受験マーケットに今日のような存
在感は、出なかっただろうと思う。また、日能研の側からみれば、サピックス
の多店舗展開が、TAPとの棲み分けのようになると高をくくったのか、それ
とも多店舗展開のオペレーションが上手く行かないと踏んだのか、全くと言っ
ていいほど、サピックスを叩こうという戦略も戦術もなかったようだ。
日能研はやっと最近になって対応策をとったが、合格実績に水をあけられて
からの戦略変更だったので、それなりに衝撃度や気合を必要としたが、実際に
はその戦略の有効性は、期待外れであったといって良い。
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2015.07.17
2009.10.31
合資会社 マネジメント・ブレイン・アソシエイツ 代表
1961年、神奈川県横浜市生まれ。 現在、合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表。 NPO法人 ピースコミュニケーション研究所理事長。