火を使わず煙が出ないスモーキングデバイスとして数年前に登場し、紙巻きタバコから乗り換えるスモーカーが急増している「加熱式タバコ」。 その販売競争が今年に入って一気に激化しています。 ここ近年、受動喫煙対策の強化や健康志向の高まりなどで、紙巻きタバコの売り上げは長期的に低迷。加熱式タバコで収益を上げたいタバコメーカーでは、今年からコンビニでの販売展開や本体キットの実質値下げに踏み切り、加熱式市場でのシェア拡大を狙っています。しかし、販売競争が過熱する加熱式タバコのマーケットは、今後の増税や規制を受けて厳しい展開となりそうです。
紙巻きタバコと同様、受動喫煙強化対策の規制対象に
厚生労働省によると、日本国内における2016年の喫煙率は18.3%で、10年前より5.5ポイント減少。一方で加熱式のユーザーは増えており、喫煙者の約2割を占めると見られています。
しかし、普及が進む加熱式タバコへの逆風は、今後一気に強まりそうです。
今国会に提出された厚生労働省の健康増進法改正案では、紙巻きタバコに加え、加熱式タバコも受動喫煙強化対策の規制対象に。加熱式タバコの受動喫煙による健康被害は明らかでないものの、主流煙の水蒸気に有害物質が含まれるとして、同省では「規制すべき」と判断したようです。
改正法が成立すれば、2020年の東京五輪までに段階的に施行され、大型の飲食店では「加熱式専用の部屋」を設けなければ、飲食しながらの喫煙は認められなくなります。とはいえ「喫煙は飲食ができない喫煙専用室のみ」に限定された紙巻きタバコと比べると、規制内容がやや緩くなっているようです。
2018年から2022年まで5年連続で段階的に増税
さらに、今年10月には加熱式タバコ初の増税も控えており、すでに3メーカーでは専用タバコを10月から値上げすると発表(アイコスとグローは1箱40円値上げ、プルームテックは1箱30円値上げ)。加熱式タバコの税額は、今年から2022年まで5年連続で段階的に引き上げられるため、来年以降も専用タバコの値上げは続くと見られます。
現在、加熱式タバコにかかる税率は紙巻きタバコより低く、3メーカーの加熱式専用タバコの税額も1箱あたり34.28円~192.23円と大きな開きが生じています(製品ごとにタバコ葉の量が異なるため)。こうした格差を踏まえ、財務省では加熱式タバコに新たな税額算出方法を導入。最終的には税額を紙巻きタバコの7~9割程度(210~290円)まで増やし、製品間の税額のばらつきも縮小させるとしています。
何だかんだとロジックを並べていますが、要は「取れるところからむしり取れ!」という「国の正義」はいまだ健在のようです(笑)。
最後に──。加熱式タバコはクリーンで健康的なイメージで見られがちですが、タバコであることに変わりはありません。紙巻きタバコより有害物質が少なく、副流煙が発生しないとはいえタバコはタバコ。健康のためにも、お財布のためにも、増税による値上がりが禁煙のきっかけになるのであれば、それはそれでよいことなのかもしれませんね。
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