いま、経済の世界でもっとも熱いキーワードのひとつが、シェアリングエコノミーだ。 シェアリングエコノミーは、住まいでも家具でも洋服でも、あらゆるものを自分で所有するのではなく、他人と共有してコストを削減しようという新しい概念。なかでも、急激に成長を遂げているのが、車に関するシェアだ。 ひと昔前は、マイカーは自分自身のライフスタイルやステイタスを誇示するものであり、運転席に座ってハンドルを握れるのはオーナーだけ……という考えが一般的だったが、その概念も様変わりしている。 大枚をはたいて車を所有するのではなく、他人と安価にシェアして使いこなそうというライフスタイルには、いったいどんなメリットがあり、なぜ急成長を遂げているのか。今回は2回に分けて、シェアリングエコノミーを多面的に見ていこう。
ちょっとしたドライブや買い物、また、子どもの送り迎え、友人との待ち合わせなどに、とても便利。車をもたなくても、車をツールとして利用できる、新しいシステムである。こうした点から日の出の勢いで需要が高まっていることがよくわかる。
個人だけではない。急速に増える法人需要
こうしたカーシェアシェアリングの新しいしくみを活用しているのは、一般の個人消費者だけではない。
実は、このブームを後押ししているのは法人の需要なのだ。
たとえば、ある大手の不動産会社を例にとると、昨年から全国の営業所で、カーシェアリングの利用を始めたという。約2000人の営業マンが、各地域の用途に合わせ、車種や時間、場所などを必要に応じてインターネットで予約し、営業活動に活用しているという。
その会社では約600台の営業車を所有しているが、車のリース代や駐車場代、さらにはガソリン代などを含めると、1台あたり毎月7万円の維持費がかかるという。カーシェアリングだと、これらの経費をかなり圧縮できるとのこと。
たとえば、地方への出張などの場合、最初から車で出向くのではなく、まずは電車で移動し、現地でカーシェアリングする方法をとることもできる。法人にとっても非常に使い勝手のよいシステムなのである。
商売敵も、カーシェアリングに参入?
個人にとっても、法人にとっても、非常に使い心地のよいカーシェアリング。
この急成長に目をつけ、意外なことに既存の自動車メーカーも参入を始めている。カーシェアリングが増えればマイカーは売れなくなるだろう……普通はそう危惧しがちだが、実際のところホンダなどの大手が続々参入をスタート。一見、商売敵(がたき)のように受け取れる自動車メーカーでさえ、時代の潮流の変化に乗り遅れまいと、多様な販売チャネルを求めていることになる。いままさに業界全体が大きな変化を遂げているのだ。
── 次回は、カーシェアリングにまつわる大手自動車メーカー参入の動き。加えて、カーシェアリングが持っている意外な落とし穴、デメリットなどについて解説しよう。
≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。
【記事元】
日本クラウド証券株式会社 https://crowdbank.jp
日本クラウド証券メディア マネセツ https://manesetsu.jp
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