栄枯盛衰が激しい時代においても、変わらず売れ続けている商品は存在する。その「定番商品」の売れ続けるヒミツとはなんだろうか。そして、その定番商品の代表格たる「正露丸」はどのような変化を遂げているのだろうか。
100年以上変わらない定番品。商品の進化の過程から考えても極めて異質な存在だといえるだろう。
しかし、効きそうなニオイではあるものの、「どうしてもそのニオイがダメ」という人も少なからず存在する。そんな消費者のニーズに応えて、実は「変わらぬ定番品」は変化していたのだ。
今日でも販売されている「セイロガン糖衣A」の原型となる糖衣錠が、大幸薬品によって1966年に発売された。(大幸薬品のホームページより)
開発されて以来、実に63~64年経ってのことだ。さらに15年を経た1981年、飲みやすさを向上させた「セイロガン糖衣A」が発売された。
開発されて60余年、さらに15年後に製品改良と、恐ろしく長いスパンの中ではあるが、変わらぬと思われがちな定番品もきちんと変化を遂げているのである。
そして、2,009年の2月に大幸薬品から「セイロガン糖衣A 120錠(PTP包装)」が発売された。ポイントは錠数だ。「家庭の常備薬」としているヘビーユーザーからの「より大容量のものが欲しい」との声に応え、120錠入りの製品を発売したという。ただ、従来のように茶色い瓶にゴロゴロと入っているわけではない。製品は1シート12錠入りのPTP包装で、1シートが簡単に3分割できる折り目入りとなっている。そのため1回分(4錠)や1日分(12錠)に分けて持ち運ぶ際や、ご家庭や職場の一人ひとりで取り分けをする際に便利という工夫をしているのだ。
もう一つ、外的要因の変化に対してバリエーションを増やす展開も行っている。一人暮らしや少人数の家族に便利な小容量タイプの「正露丸 50粒」も発売したのだ。
当時の環境はは、一世帯当たりの平均人数が2.43人(国土地理協会 発行「住民基本台帳人口要覧(平成20年版)」から)と減少し、一人暮らしの世帯が3割(平成17年国勢調査の結果から)に迫る等、家族の少人数化がかなり顕著になってきていた。この流れを受け同社では、一人暮らしや少人数での使用に便利な小容量タイプ新発売するに至ったのだ。
少子化や家族人数の少ない家庭が増える小世帯化の流れはもはや止めることはできず、今日は当時よりさらに進行している。そうした外的環境に的確に対応したのだ。
また、ドラッグストアでの販売環境や、当時の薬事法改正によってスーパーやコンビニでも大衆薬の販売が開始されることから、売り場環境への変化にも対応した。外箱を改良し、吊り下げての陳列が可能な形状としたのだ。製品のパッケージ変更は最も簡易な変更であるが、製造ラインの変更などそれなりに手間はかかるだろう。
正露丸も変化する速度が通常と比べて非常にゆっくりであったり、小さな変化であったりするものの、生き残るために、確実に変化しているのである。100年を超える定番でも確実に変化しているのである。世の中の変化は早まり、経済的な厳しさが高まる今日、全ての商品も、企業も、ビジネスパーソンも、生き残るための変化を欠かすことはできないと言えるだろう。
※ダーウィンの『種の起源』に関しては、wikipediaのチャールズ・ダーウィンの項を引用しました。
(再編集・再掲載)
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。