Wiiフィットが発売1ヶ月で100万台を突破した。Wii用ソフトとしては最速ペースだという。パッと見には体重計にしか見えないゲーム機が、なぜこれほどまでに売れたのだろうか。
そしてコンセプトの違いは、両社のビジネスモデルの違いにその原点
を求めることができる。ビジネスモデルすなわち、誰に、どんな価値
を提供して対価を得るのか。
Wiiが目指したのは、従来なら子どもがゲームに夢中になっている姿
を全面的に好ましいとは決して思っていなかったお父さん、お母さん
までが一緒になって楽しめる「おもしろい世界」である。そのために
はゲーム機そのものも子供部屋ではなく、家族が揃うリビングに置か
れなければならない。だから、あのデザインなのだ。いかにも子ども
のオモチャっぽい仕上がりでは、テレビまわりに置かれたときに違和
感が出る。なじむサイズ、デザインを求めて徹底した吟味が加えられ
た。
さらにコントローラーである。ゲーム機を操るインターフェイスはこ
れまでコントローラーと呼ばれてきた。しかしWiiは違う。「リモコ
ン」である。テレビのリモコンと同じように家族誰もが難なく操作で
きるデバイス、だからリモコン。コントローラーを操ることのできる
のはゲーマーだが、リモコンはそうじゃない。
その開発に当たっては「手で持つことすらリセットしてよい」ことが
社内的なコンセンサスとなっていた。何のためにかといえば、新たな
ターゲットに新たなゲームの楽しさを届けるためにだ。
懸念はあった。従来のコントローラーとはあまりにかけ離れた形状
が、これまでのゲームユーザーやゲームデザイナーから反発されるの
ではないか。あるいは過去のソフトを操作できなくなる恐れはない
か、と。しかしリモコンが具体的な姿を現したとき、これらの懸念は
一掃される。開発スタッフの誰もが「いける」と直感した操作性は、
ゲームデザイナーのクリエイティビティをもいたく刺激する。ユー
ザーまた然り。
リモコン開発のコンセプトが、さらに先鋭化しゲームとして結実した
のがWiiフィットである。コントローラーのモチーフはなんと体重計
である。そして遂には柔軟体操やヨガ、筋トレまでがゲームになっ
た。おもしろければ、何でもゲームになる、というかゲームにしてよ
いのが任天堂なのだ。
このラジカルさはおそらく任天堂の遺伝子のなせる業と言ってよいの
ではないだろうか。「『おもしろさ』とは何かを、うちはずっと追求
しているんですよ」とは以前、同社前社長・山内溥氏からお話を伺っ
たときにもっとも印象に残った言葉だ。そのためには、ともかく変
わったこと、新しいことへのチャレンジを社を挙げて奨励する。人と
違うことをすると「みんなが」ほめてくれる。これが任天堂である。
この任天堂DNAが次に、何をゲームとして見せてくれるのか。とて
も楽しみだ。
※
この原稿に盛り込まれた情報の多くは、任天堂ホームページ内にある『社長が訊く Wiiプロジェクト?Wiiが誕生したいくつかの理由?』を参照しました。
→ http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html
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