子どもの学力が低下している。OECDが実施した学力テストの結果、日本は数学的応用力、国語読解力、科学的応用力のいずれについても前回の成績を下回った。その背景には実はかなり根源的な問題が潜んでいるのではないだろうか。
たとえば起業時には「これしかない」と思われた戦略が、競争環境が変化
したために修整を余儀なくされる、なんてことは現実ではほとんど日常茶
飯事である。ところが人は過去の成功体験にこだわったがために判断を誤
るケースが多い。その根っこにあるのが「正解は一つ」と考えてしまいが
ちな思考パターンにあるのではないだろうか。
少なくとも現実問題を解く場合には、時間による変化という不確定要素が
必ず入ってくるのだから、正解は状況に応じて変化すると考えておくべき
だろう。
さらに、現実問題については本来なら、まず何が真の問題なのかを問うべ
きである。よく例に挙げられる話だが、たとえば売上が落ちていることは
本当の「問題」ではない。本当の問題は、なぜ売上が落ちているのかを問
いつめて行った先に浮かび上がってくるものだ。
そこでもし「売上が落ちている」ことを問題と定義してしまうと、解決策
は「売上を上げる」ことになる。
売上が落ちている会社ではマネジャーが営業マンに対し「売上が落ちてい
る。これは実に由々しき問題だ。だから、何とか売上を上げろ」とハッパ
をかけたりする。しかし、これでは何の問題解決にもならないことは明ら
かだろう。
「正解は一つ」思考につきまとうもう一つの大きなリスクが、こうした問
題の単純化だ。答を一つに絞り込むためには、問題も当然一つでなければ
ならない。そう考えてしまうことにもリスクがある。特定の状況を引き起
こしている問題は決して一つとは限らないし、仮に一つに思えても、その
奥にあるより本質的な問題に分解できることが多い。ここで思考の深さ、
粘っこさが問われるわけだが、そうした思考訓練は日本の学校ではあまり
重視されていないようだ。
たとえば算数に関して
5+7=? といった計算問題はたくさん練習するけれども
□(+/ー/×/÷)△=12 といった案配で問題そのものを自分で創り
だすような訓練はまずやらない。
特定の状況について、その問題点をリストアップし、各問題の関与の仕方
や絡まり具合を見極めること。その上で問題状況を引き起こしている影響
度や解消法の選択肢と実施容易性などを総合的に判断して問題に対処する。
とっても面倒くさいけれども、こうした訓練をどこかの段階できちんとや
ることがとても大切だと思う。
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