新規事業の多くは失敗する。その失敗の原因を経営者のパターンごとに分析し、成功の為の処方箋を書く。上巻からの続き。
撤退のジャッジは、現場の担当者達の士気と活動を詳細確認した上で決めるべきだ。本当にあともう少しで形になるのか、それとも完全に死に体のものを取り繕っているのかは現場に聞かないとわからない。
そして、もう一つ絶対に忘れてはならないことがある。新規事業に携わった人間たちの処遇についてだ。
筆者自身が、新規事業へのチャレンジを促された際に、同じく声を掛けられた人物もいたが、その内の多くが現行の職務から離れて新規事業にチャレンジすることを拒んだという事実がある。
その中の一人との会話の中で実に残念な理由が挙げられたのだ。
「この新規事業は極めて難しい案件だから成功確率は低い。そして、もし失敗した場合に、現在のポジションに戻れるかどうかの保証は全くない。新規事業は大変なエネルギーを使うにもかかわらず、成功率は低く、且つ失敗した場合の処遇にも不安が多い。だから筆者は現在の仕事を離れるつもりがない。」という内容だった。
失敗した場合に、チャレンジ前と同様のポジションを保証すること。そして成功した場合には成功の果実の一部は与えられること。
この2つがないと、あえて道無き道にチャレンジすることへのインセンティブは働かない。筆者のように、他人の作ったレールに素直に乗ることが好きではない「イバラの道」好きは、どうも世の中ではマイノリティで、通常は新たな事業へのチャレンジ障壁は相当に高いものらしい。
確かに、多大な投資により企業のキャッシュ・フローが一時的に厳しくなったために、全社的な労働分配率の低下、すなわちボーナスの減額などが行われるようだと新規事業はやり玉にあげられる。
心無い人は、「あの新規事業のせいで我々儲かっている部署のボーナスまでカットされた」などとのたまうこともあるだろう。他人の敷いた道の上をつつがなく進むのと、道無き道を進むことを、同じテーブルの上で議論する事は100m走と競歩を比較するような愚かな行為であるにもかかわらずだ。極めて残念なことではあるが、これもある種の宿命なのだろうと諦めるしかない。「やられたら倍返しだ!」を目指して結果を出すための糧にするのが健全な思考と言えるだろう。
成功率が低く、ストレスフルで、誰もゴールを示してくれない新規事業へのチャレンジには、アップorアウトの条件では誰もチャレンジしなくなり、せめてアップorステイを経営者や事業オーナーの口から明示することで、後塵の憂いなくチャレンジできるというものだ。その点が未整備な状況で新規事業、新規事業とおっしゃっている経営者は、まず戦えるフィールドを与える前に、チャレンジする為の発射台を堅固なものにすることをおすすめしたい。それが、人事的な処遇の明確化である。
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2013.12.16
2015.01.27
株式会社リアルコネクト 代表取締役
【自己紹介】 BtoB営業組織改革・新規事業開発を専門とするコンサルタント。新規事業企画担当者・営業マネージャー・B2Bマーケッター・営業マン向けのセミナー/研修/ワークショップの講師・ファシリテーターを中心に営業組織改革、新規事業開発支援等のコンサルティングを行っている。 【保有資格】 中小企業診断士・経営管理修士(MBA)・日本酒利酒師