新規事業の多くは失敗する。その失敗の原因を経営者のパターンごとに分析し、成功の為の処方箋を書く。上巻からの続き。
できれば他の企業での修行期間中に、1度や2度の新規事業開発の経験を積み、プロジェクトマネジメントや事業計画書作成のノウハウ、マネジメントのあり方などを学び、何よりもチャレンジ精神や折れないココロなどを手に入れた上で、家業に入るというプロセスを経て頂きたいものである。
そうすれば、事業承継の際にも、父親である社長や番頭さん他古参社員に自分の存在を認めさせてスムーズな承継が出来る上に、家業にも新たな収益の柱ができるという2重に美味しい効果が見込めるはずだ。
少なくとも、何もバックグラウンドを持たずにチャレンジする起業家に比べ、大企業と比しては乏しいとは言え、一定の経営資源を持ってビジネスを行える後継経営者には、是非日本の中小企業の活性化のために果敢なチャレンジをしていただきたいものである。
③サラリーマン社長の場合(一定期間で人事異動が発生する企業の場合)
日本の多くの大企業がそうであるように、サラリーマン社長の場合には社長の任期というものがある。もちろんそういった会社の場合には役員以上は任期が決まっており、3年・4年というスパンで人が変わっていくのが通常であるといえる。
新規事業の規模にもよるが、多くの場合新規事業の投資意思決定は社長・あるいは役員の決裁となるケースが殆んどだろう。旗を振るのが部長格であったとしても、そこでの決裁で全てが進められるというケースはそう多くはないはずだ。
何が言いたいかというと、オーナー企業でない場合は、3年以内程度に潰されないだけの規模に事業を持っていかないとならないということである。
少なくとも、他人が作り出した新規事業に対しては、余程の可能性が見込まれない限り思い入れをもって接することは難しい。自分が得た新たなポジションで、自分の実績を作るためには他人の手垢のついた事業にかまけている暇はない、というのが一般的な人間の心情だろう。特に、既にIRやマスコミ発表などが終わっている案件においては、その事業に対してのモチベーションが上がらないのは当然だろう。既に手柄は前任者のものであり、懸命に取り組んでも自分自身が大きく日の目を見ることはないのだから。ここに任期制で役員が変わる組織の限界がある。
したがって、繰り返しになるが3年をめどに、収益の出ることが仮説検証されている状態にもっていけないようであるならば、停止や縮小の憂き目に合うことは覚悟をして取り組まなければならない。社を上げた大きな新規事業の場合、論理的に考えたら、準備から含めて立ち上がるのに5年以上かかるということもそう少なくはない。設備やシステムの投資を伴う場合、投資回収まで含めて5年以上というのは普通に考えられる構図ではある。しかし、筆者は3年で小さく投資回収が出来る範囲で始め、投資回収ができたら次の機能拡張を進めていくという多段階発射で新規事業を行うことを薦めている。小さく始めて大きく育てるという考え方が、任期制で人事異動がある企業の進むべき新規事業の形である。
次のページⅣ.新規事業立ち上げに関与する気概ある方々へ
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2013.12.16
2015.01.27
株式会社リアルコネクト 代表取締役
【自己紹介】 BtoB営業組織改革・新規事業開発を専門とするコンサルタント。新規事業企画担当者・営業マネージャー・B2Bマーケッター・営業マン向けのセミナー/研修/ワークショップの講師・ファシリテーターを中心に営業組織改革、新規事業開発支援等のコンサルティングを行っている。 【保有資格】 中小企業診断士・経営管理修士(MBA)・日本酒利酒師