マクドナルドの時給は800円、マッキンゼーのシニアコンサルタントは時給8万円――仕事をしていて、なぜ100倍もの差がついてしまうのか。リクルートで働き、中学校の校長を務めた藤原和博さんに、その謎を解説してもらった。 [土肥義則,Business Media 誠]
藤原:「レアな存在になれ」と言われても、10万人に1人、1万人に1人の存在になることって難しいですよね。例えば、いまからiPS細胞を研究して、山中伸弥教授を越えることは難しい。20~30年黙々と研究を続ければ山中教授を追い越すことはできるかもしれませんが、その可能性はものすごく低い。それほどの時間をかけても、教授に追いつけるのは1万人に1人……いや、100万人に1人もいないかもしれません。
1万人に1人の存在になることは難しいことですが、100人に1人だったらかなりの確率でなれると思うんですよ。例えば、パチンコをするのかどうか、電車の中で寝ているのか本を読んでいるのか。こうした違いだけでも、2分の1、4分の1……となっていき、すでに25人に1人になっている。このように考えると、100人に1人になることはそれほど難しいことではないんですよね。
仕事が終わってから英会話学校に通ったり、資格試験の勉強をしている人は、ひょっとしたらもう100人に1人になっているかもしれません。でもここで終わってしまうと、1万人に1人というレアな存在にはなれません。
◆自分の得意分野を“混ぜる”
土肥:では、どうすればいいのでしょうか?
藤原:もうひとつの100人に1人になることが大切になってくるんですよ。考え方としては「100人に1人×100人に1人=1万人に1人」ということですね。
ひとつの領域で1万人に1人の存在になることは、ものすごく難しい。ところがふたつの領域を混ぜて、「100人に1人×100人に1人=1万人に1人」になることはそれほど難しくはありません。掛け算をすることで1万人に1人の存在になる……これが情報編集力でもあるんですよ。
例えば、Aさんは「お笑い芸人になりたい」と思っているとします。しかし、明石家さんまさんを越えるためには10万人に1人、100万人に1人の存在にならないといけません。またAさんは「美容師にもなりたい」と考えているとします。カリスマ美容師になるには、10万人に1人、100万人に1人の存在にならないといけません。そこでAさんはお笑い芸人として100人に1人の存在になって、かつ美容師として100人に1人の存在になれば、「お笑い美容師」というカテゴリーができてしまう。つまり「自分で混ぜて」つくってしまうんですよ。
これからの10年間で、サラリーマンは何らかの領域で100人に1人の存在になるだけではなく、もうひとつの領域でも100人に1人の存在になってほしい。ただし、他人がつくった土俵で戦うのは難しい。自分の得意分野を混ぜて、自分だけの土俵をつくることがポイントですね。
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仕事をしたら“10年後のサラリーマン”が見えてきた
2013.04.11
2013.03.25