これから「仕事人生」という大海原に漕ぎ出でんとする新社会人に3つのメッセージを贈ります。
就職のチャンスは、新卒のときだけに限りません。今後一生、いつでも職に就くチャンスがあるのです。「職に就く」とは何も社外への転職だけを言うのではなく、同じ会社内で魅力的なプロジェクトに参画するというのも広い意味で就職チャンスです。そのときに、自分が選んでもらえるかは、ひとえに、あなたが日々月々、積み重ねていく能力や経験といった内的資産です。ですから、今回、第一志望の会社に入れなかった人も、今後、そのリベンジチャンスはいくらでも手にできると考えていいでしょう。
◆12年の時を越えて出した答え
35歳になったときでした。私はベネッセで書籍とビデオのセット商品を担当することになりました。その中のひとつは天文学をテーマにしたもので、ハワイ島・マウナケア山にある「すばる天文台」を取材し、その映像で構成しようという企画でした。どこに制作を依頼するか検討した結果、科学番組の制作技術で定評のあるNHKの関連会社に決めました。加えて映像の案内役としてNHKの解説委員を登場させることにしました。
制作関連者が一堂に会する第1回目の会議の場。私はコンテンツ商品の発行元の代表として参加しました。プロジェクトの中ではプロデューサーという立場になります。そしてテーブルをはさんで対面には、NHK関連会社側のディレクターやカメラマン、そしてテレビでお馴染みの解説委員のYさんがいらっしゃいました。ざっくばらんに企画会議を進める中、私はかつてNHKに入りたかったんだよなぁ、こういう願いのかない方もあるんだなぁと、不思議な気持ちに包まれていました。
この企画は半年後、無事商品となって書店に並びました。そして彼らとの共同制作で確信できたことは、「自分は映像メディア向きの人間ではなかった。私は活字メディア向きの人間だった」ということです。第一志望NHKへの入社試験に敗れて、実に12年が経っていました。12年越しに得た答え。それは負けを取り戻せたとかいう次元ではなく、腹から納得できる答えが出せたという感動に近いものでした。
人生・キャリアは、唯一無二の“正解値”がある算数問題ではありません。自分なりに“納得できる答え”をつくり出せるかという価値実現の問題です。それはいわば絵を描くことであり、自分の模様を編んでいく創造作業です。短期にはそうやすやすと出来上がるものではありません。
どうか5年、10年、20年の時間単位を持ち、短期のことに焦らず腐らず、足下のことを一つ一つ大事にしながら歩んでいってください。そうすれば将来のどこかの時点で、必ず自分の来た道を悠然と振り返られる状態になるはずです。そのときの充実感こそ、あなたのキャリア上の勝利ということになります。これが2点目のメッセージです。
次のページ◆不確実性の人生にあって「心のベクトル」を持て
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。