「YOSOOU(粧う)」。この和風な名前は、この冬2シーズン目を迎えたダウンウェアのブランドだ。しかし、よくあるダウンを看板にしたカジュアルブランドとは異なる。コートだけでなく、ジャケットからトレンチコート、スカートやドレス、それにボウタイまですべてダウン入りという商品展開をしている「何でもダウンで作る」ブランドなのだ。ユニークなブランドの狙いを 株式会社パブリックスペース・永嶌社長に聞いてきた。
では、YOSOOUはどのような顧客を取り込んでいるのだろうか。
ユニクロなどの汎用的な商品には満足ができない。しかし、スポーツブランドにありがちな「いかにもダウン」というような、主張した製品にも抵抗がある。「スマートでオシャレなダウンを手ごろな価格で手に入れたい」という未充足ニーズを持った層は少なからず市場に存在していた。その、「ホワイトスペース」に製品を投入し、一気に顧客を獲得したのである。「YOSOOUファン」は性別・年齢などのデモグラフィックなセグメント軸ではなく、「製品・価格への未充足ニーズを持っている」という共通因子が決め手だったのである。
「ホワイトスペースを狙う」というと、そこには割り切った計算に基づいた戦略が存在すると思われがちであるが、実際には経営者の熱い想いも存在した。
「ストレッチダウンの文化を広めたい」と永嶌社長は語った。
「従来のダウンウェアはボリュームが出すぎて好まない、スタイリッシュな消費者層を感じていた。かといって、モードに走るのではなく、あくまでスマートなカジュアルを目指す事で、誰にでも着られる、一家に一枚の家族で着回しのできるウェアを作りたかった」のだという。
百貨店でのイベント販売を中心とした展開にこだわるのは、固定費圧縮のためだけではない。
「従来のカジュアル商品では、作り手の思いが消費者に伝わらなかった。なぜなら、カジュアル商品は“接客”をしないから。百貨店での販売はきちんと商品の説明ができ、さらに消費者の声、ニーズを収集する事もできる」という。
ホワイトスペースを発見しても、そこに顧客が存在しなければ、単なる沙漠でしかない。また、顧客が存在しても振り向いてくれなければ商売にはならない。YOSOOUの市場機会の発見と、顧客ニーズを拾い上げる展開から学ぶべきところは大きい。
YOSOOUの挑戦は完成したわけではない。2年目の今年、より多くの未充足ニーズを集められるように、さらなる新素材や縫製の技術を取り込んで多様な商品を展開している。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。