「決意」が人を最も元気にする

2012.09.18

仕事術

「決意」が人を最も元気にする

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ストレスフルな社会にあって、ほんとうに元気になるために必要なことは何か───それは「決意」すること。

 こうしたことを受け、私は「幸福とは、自分が見出した意味に向かって坂を上っている状態」と拙著『プロセスにこそ価値がある』の中で定義した。私もまた、行動主義的幸福観をもつ者の一人である。
 意味とは、言い換えれば、夢や志、目的といったものである。それを成し遂げようと「決意する」とき、人は元気になる。元気とは、その字のごとく、その人の元のところから湧き起こってくる気だ。その人が本来の自分になるためのエネルギーだ。

 なにかとストレスが重くのしかかる昨今の仕事生活にあって、人びとはよく、「癒されたい」と願う。そして「癒し」をうたう商品・サービスも花盛りだ。
 しかし、「癒し」は病気や傷をなおすことであり、あくまでマイナスの状態をゼロに戻す手当てでしかない。“やまいだれ”が付く字であるのはそういうことだ。
 いくら高価な「癒し」の商業サービスを受けても、プラスゾーンに突入できるほどのエネルギーは得られない。通常のストレス負荷にさらされれば、すぐまた、マイナスゾーンで疲弊することになる。

 もちろん、疲れた心身に癒しは必要である。だが、中長期にわたって、ほんとうに元気になっていくためになにが必要か、そこを考えなければ、いつまでも「ストレス負荷→癒し・憂さ晴らし」のサイクルをマイナスゾーンでぐるぐる回る生活を続けるだけになってしまう。
 では、ほんとうに元気になるために必要なものとはなにか───それは「決意」することである。意味を見つけ、そこに肚を決めて行動することが、人が一番元気になることなのである。
 たしかにそこにはストレス負荷が生じる。しかし、それは「よいストレス」である。学術的には、ストレスには2種類あり、なにか建設的な目的に向かうときのストレスは「ユーストレス(eustress):よいストレス」であり、やらされ感のあるときのストレスは「ディストレス(distress):わるいストレス」となる。
 また、ときには失敗や挫折もあるだろう。だが、それは病的で不健全な落ち込みではない。自分を真の意味で蘇生させるための価値のあるプロセスとなる。苦しみのどん底にあっても、決意をした人間は「誓い」を立てることができるのだ。

 「決意のある人生」と「決意のない人生」を図で表してみた。

 「決意のない人生」(左側)は、疲弊ゾーンでこぢんまりと回るだけだが、「決意のある人生」(右側)は、元気ゾーンの住人となり躍動して回っていくこととなる。ときに、ネガティブゾーンに入っていくが、それも人生の醍醐味の一つとして、許容できるほどの力強さを持つだろう。
 作家の村上龍さんは『無趣味のすすめ』のなかで次のように書く。───「趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクを伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している」。 

 ネガティブゾーンでこぢんまり生きるか。それとも、ポジティブゾーンで、大きな喜びも大きな苦しみも抱え込んでダイナミックに生きるか。それは、ひとえに「決意するか/決意しないか」による。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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