5月7日の発売以来累計5000万本を突破したアクエリアス ゼロ。8月に入ってさらにスピードは加速し、1億本の大台も視野に入っているという。その背景には「成功すべくして成功したマーケティング計画」が存在することが、日本コカ・コーラ、アクエリアス ゼロ担当マネージャーへの取材から明らかになった。
■競合
軽い運動をした後、ターゲットは何を飲んでいるのか。それは前述の通りミネラルウォーターやお茶だ。なぜならば、「カロリーがゼロだから」。それは「スポーツ飲料離れ」という危機をもたらしている一方で、大きなビジネスチャンスを示していた。なぜならば、カテゴリー内に競合となる商品が存在していないからである。「アスリート向け」「運動向け」から「日常向け」にイメージ転換を図れば、カテゴリーのオンリーワンになれることを示している。
■失敗
しかし、日本コカ・コーラには苦い過去があった。カロリーゼロのアクエリアスを2008年9月に市場に投入し、販売に苦戦し、撤退しているのである。その時はターゲットを女性としたが、味もいまひとつという評価となってしまったのだ。
■開発・発売
市場の追い風を捉え、冒頭の「Fit body. Fit life. いきいきしたカラダへ」のスローガンも掲げた2010年。今を遡る2年前から「アクエリアス ゼロ」の開発はスタートしていた。飲料としては異例に長い、周到な準備期間だといえる。2008年の失敗を教訓として、何よりも中心は「味」の開発に置かれた。ターゲットの未充足ニーズである「すっきりした美味しさ」の実現だ。さらに燃焼系サポート成分である「カルニチン」も配合された。かくして、「カロリーゼロの水分補給」である「アクエリアス ゼロ」が5月7日に誕生した。
■コミュニケーション
コミュニケーションターゲットとしてはビジネスターゲットである40~40代への波及効果を狙って35才という年齢が設定された。セレブレティーはオダギリジョーが選ばれ、CMは「軽い運動をサポートする」という意味合いから「チアリーダーが日常の運動を応援する」というシーンが演出された。
http://c.cocacola.co.jp/aquarius/zero/tvcm/01.html
実は現代日本人のカロリー摂取量は戦後一貫して減少している。しかし、肥満を示す「BMI値」は上昇を続けている。要するに身体を動かさなくなっているのである。そこで、京都大学大学院人間・環境学研究科応用生理学研究室の森谷敏夫教授の監修を受け、「ちょこ運動」、つまり毎日こまめにカラダを動かすことを訴えることにしたのである。ターゲットが実践している「軽い運動」を無駄にしない、そのための燃焼系サポート成分「カルニチン」配合をさりげなく訴求する施策なのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。